記事のポイント
- IPCCは3月20日、気候変動に関する報告書「第6次統合報告」を発表した
- 2050年カーボンニュートラルを達成するには、35年にGHG60%減を求めた
- パリ協定参加国にとっては2025年に提出するNDCの「参考値」になる
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は3月20日、最新の科学の知見をもとにまとめた気候変動に関する報告書を発表した。パリ協定で定めた「1.5℃目標」を達成するには、各国に温室効果ガス(GHG)の排出量を2035年までに2019年比で60%削減することを求めた。日本は「1.5℃目標」に整合した脱炭素目標として2050年のカーボンニュートラルを掲げ、2030年にGHG排出量を46%減(2013年度比)という中間目標を定めているが、2035年の目標は定めていない。カーボンニュートラルの達成には5年ごとの短期目標を設定することが重要だとされており、今回のIPCCの報告書はそのための参考になる。(オルタナS編集長=池田 真隆)

IPCCがこのほど発表したのは、第6次評価報告書の「統合報告」だ。IPCCとは、気候変動に精通した科学者の知見を集約した国連機関だ。1990年から気候変動が及ぼす地球環境や生態系への影響を科学的に分析した報告書を出してきた。
IPCCは、実用可能性が未知数の炭素除去技術(DAC)などが将来的に使えるようになると仮定して、削減量を測定している。そのため、一部の専門家からは否定的に見られてもいる。だが、IPCCの報告書を参考にして、カーボンニュートラルの目標年を「2050年」に決めた国が多いことも事実だ。
その報告書はIPCCが2018年に出した「1.5℃特別報告書」だ。産業革命前と比べて地球の平均気温の上昇を「1.5℃」に抑えなければ、気候変動は解決に向かわないと指摘した。
その報告書では、このままの削減率では気候変動に関する国際アジェンダ「パリ協定」の達成が困難であることも指摘し、地球の平均気温の上昇を1.5℃に抑えるためには、2050年前後でのカーボンニュートラルが不可欠と結論づけた。こうして、各国が2050年をカーボンニュートラルの目標年としたのだ。
■国連、ネットゼロには「短期目標が重要」