生活保護世帯が増え、教育格差の問題が日本でも顕在化している。統計によると学歴が高いほど生涯賃金が高く、中卒と大卒とでは1億円以上の開きがある。しかし、進学を諦めざるを得ない子どもも多い。
貧困の連鎖を断ち切るため、米国では1990年から「ティーチフォーアメリカ(以下、TFA)」という非営利団体が活動している。
将来有望な学生などをトレーニングして貧しい地域の学校に2年ずつ教師として送り込むTFAの活動は、多くの子どもの能力を開花させたばかりではなく、教師側の人材から多くの優れたリーダーを生み出した。その成果を受けて、TFAモデルを世界に広める組織「ティーチフォーオール」が発足した。
日本では、元教師の松田悠介氏が留学先でTFAに感銘を受け、2010年にNPO法人「ラーニングフォーオール」を設立。国内でも深刻さを増す教育格差解消のため、学習支援などを行ってきた。
このたび同NPOはティーチフォーオールの23番目のパートナー団体に承認され、1月1日から「ティーチフォージャパン(以下、TFJ)」になった。今後は他国との連携を強め、世界で20年以上蓄積されてきたノウハウを共有していく。
TFJは全国に先駆けて神奈川県内の中学校で教師派遣事業を展開中。現在、2012年度の教師を募集している。また新たに東京都内の中学校に2012年度から2年間派遣する教師も募集する。いずれも1月13日まで、ウェブでエントリーを受け付けている。
東京は、主担当として授業で指導するため教員免許が必要。一方、神奈川は、チームティーチングの教員として授業に参加するため、情熱と熱意がある大卒者であれば教員免許は必要ない。
TFJがリーダーの素質がある人材を選考し、十分な研修を実施して現場に派遣する。説明会には、期間限定の教師経験のために、退社覚悟で臨む大手企業の若手社員の姿もあった。
TFJ代表の松田氏は「低所得層や教育格差の現状を身近に感じているビジネスリーダーは少ない。投票人口が高齢化した日本では教育問題を公約に掲げても選挙に勝てないため本気で取り組む政治家も足りない。だからこそ当事者意識のあるリーダーを一人でも多く輩出したい」と意気込む。(オルタナ編集部=瀬戸内千代)