脱原発デモ、「ジモト化」のきざし?――全国各地に分散

脱原発を求める人々のデモが全国各地に拡散している。大都市で行われる数万人規模の「巨大デモ」こそ回数は減ったが、地域レベルの草の根デモは、今や毎週末に必ずどこかで行われている状況だ。

■原動力は「有象無象」と「ジモト」

2月19日の「脱原発杉並デモ」=高円寺付近で

2月19日に杉並区内で行われた脱原発デモには5~6千人が参加。人数こそ昨年4月10日の同高円寺での「原発やめろデモ」の約3分の1にとどまったものの、集会やデモの雰囲気は脱原発気運の退潮を全く感じさせなかった。

今回のデモは立案から準備、当日の役割分担に至るまで、地域のつながりの力が存分に生かされた。デモコースの周辺地域には事前にチラシが配られ、当日は多様な参加を実現するために「カラオケカー」や「移動屋台」、果ては参加した子供たちを飽きさせないよう、お菓子を乗せたカートまで登場。有象無象(うぞうむぞう)=雑多な人々が「原発はいらない」の一点で集まり、デモを歩いていた。

また、沿道では地元の人々が手を振って応援していたほか、コースに面した住宅の窓からメッセージを掲げるなどして、それぞれの方法で「脱原発」を意思表示。解散後の参加者を当て込み「デモ割」サービスを実施する飲食店も現れた。「脱原発を叫ぶデモは市民から孤立した」などという論調は、今回に関して言えば全くの的外れだ。

■デモの敷居は高くない

デモに参加する意味や開催方法をまとめた本『デモいこ!』

「最も基本的で簡単な政治的アクションがデモ。デモの敷居は人が思うほど、高くはありません」と話すのは、ツイッター上で脱原発デモを呼びかける有志グループ「TwitNoNukes(ツイット・ノー・ニュークス)」が昨年末に刊行したガイドブック『デモいこ!』(河出書房新社)の編集に参加した、野間易通氏だ。

東電原発事故を通じて「原発は地域と相容れない」ことが明らかとなった。モラルハザードで安全軽視に陥った原発がひとたび事故を起こせば、周辺住民は避難を強いられ、コミュニティは崩壊する。城南信用金庫が脱原発の旗幟を鮮明にした理由も、まさにそこにある。

そして「原発やめろデモ」などの一連の街頭デモは、言いたいことがあれば空気を読まずに声に出していいし、またそうするべきだということを社会に示した。そのことに気付いた人々が、各自のジモトで声を上げている。今や脱原発は、人々の生活を左右する切実な問題なのだ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)2012年3月2日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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