政府、がれき処理問題で30億円以上かけメディア動かす――大手新聞各社の社説は奇妙な横並び

環境省が展開するがれき広域処理キャンペーン

東日本大震災の被災地3県のがれき処理問題で、政府ががれきの広域処理を呼び掛けるメディアキャンペーンを展開している。

環境省は新年度、除染関連と合わせて30億円以上の予算で広報業務を進める予定だ。すでに大手新聞各紙の社説は「広域処理支持」で奇妙なほど足並みがそろっている。

この問題では「放射性レベルが低いのなら、がれき処理専用の仮設焼却炉を現地につくって処理するのが最も効率的で、現地に雇用も生まれる」(池田こみち・環境総合研究所副所長)、「バグフィルターの性能の検証や、灰の処分方法の変更、排水処理の高度化などが先」(高野雅夫・名古屋大大学院准教授)などの異論がある。

しかし政府は早急な広域処理の一点張り。新聞社説も、何かと対立する読売と朝日ですら「広域処理の流れが加速することを期待したい」「『お互いさま』の精神で…広く受け入れよう」と同調する。その他の社も「助け合い」「手を差し伸べて」などの感情論を織り交ぜながら広域処理を進めるべしとの論調で一致している。

すでに朝日、読売は3月6日付紙面で広域処理を呼び掛ける全面カラー広告を掲載、東京新聞の親会社である中日新聞も3月29日付でモノクロの全面広告を掲載した。

環境省によると前者は同省単独の広報、後者は内閣府による政府広報の一つで、地方48紙に順次掲載されるという。新年度は代理店の提案を受けて、こうした広報が新聞やテレビでさらに繰り返されることになる見通しだ。

朝日、毎日、読売、日経、産経、東京(中日)の新聞6社に、広域処理の広告と社論の関係について聞いたところ、「仮定の話には答えられない」(日経)、「個別の契約には答えられない」(毎日)、「取引内容に関わるので公表していない」(朝日)と、こちらも横並びの回答だった。

東京は「(自社の)広告掲載基準に照らして問題がなければ掲載をお受けすることになる」と一歩踏み込んだ回答を寄せたが、基準自体は非公表だ。

社論との関係も「広告掲載の有無が取材・報道に影響を与えることは一切ない」(読売)、「編集方針とは関係ない」(産経)とした。巨額の税金がつぎ込まれる以上、マスコミ自身の説明責任も強く問われることになるだろう。(オルタナ編集委員=関口威人、編集部=赤坂祥彦)

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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