EU、代替フロンを50年に全廃:空調や冷蔵機器の影響必至

記事のポイント


  1. EU理事会は、代替フロン(HFC)を段階的に削減し2050年に全廃する新たな規制を採択した
  2. 空調や冷蔵機器で使われるフロン類は、CO2の数百倍から1万倍以上の温室効果がある
  3. フランスとベルギーの年間排出量合計に匹敵する、5億トンの排出削減を見込む

EUは、代替フロンのハイドロフルオロカーボン(HFC)の使用を2050年に全廃する。空調や冷蔵機器で使われるフロン類は、CO2の数百倍から1万倍以上の温室効果がある。CO2換算で、フランスとベルギーの年間排出量の合計にほぼ匹敵する、5億トンの排出削減を見込む。(オルタナ副編集長・北村佳代子)

EUはFガスに関する新規制を採択した

EU理事会は1月29日、フッ素化ガス(Fガス)やオゾン層破壊物質(ODS)の段階的削減を目的とした新たな規制を採択した。フロンは、フッ素系のガスであることから、世界的にはFガスと呼ばれる。

フロンの中でも、オゾン層破壊物質はこれまで段階的に製造が中止されてきたが、オゾン層を破壊しない「代替フロン」も、CO2の数百倍から1万倍以上の強い温室効果があることからその対策が迫られていた。

フロンは、冷蔵・冷凍庫、空調機器、洗濯乾燥機(ヒートポンプ式)、断熱材など、さまざまな製品・産業で使用されている。

EUは、最も普及しているFガスであるハイドロフルオロカーボン(HFC)の販売を、2030年までに2015年比で95%削減し、2050年までに全廃する。

ヒートポンプ、エネルギー伝送用のスイッチギア(開閉装置)、医療分野で使用される製品など、環境に配慮した代替品がある機器では、Fガスの使用をすべて制限する。環境に配慮した代替ガスの使用にはインセンティブを提供するほか、古い建物や改装中の建物の断熱材などからのFガスやODSの排出も削減していく。

またEUから有害な製品が世界に出回ることのないよう、地球温暖化係数(GWP*)の高い冷媒を使用した旧式の設備を、EU域外の国に輸出することも禁じる。

欧州委員会のウォプケ・フークストラ気候担当委員は、「新たな規則は、世界で最も野心的なものだ」とコメントした。

「冷蔵庫、ヒートポンプ、空調機器、エアゾールスプレーなどの製品での温室効果ガスの使用を回避し、それら製品を、気候への影響をより抑えるものとする。同時に、EUの産業界に技術革新を促し、新たな機会を創出していく」(フークストラ気候担当委員)

*地球温暖化係数(Global Warming Potential):CO2が温室効果をもたらす度合いを1として、他の温室効果ガスの温室効果をもたらす度合いを対比で示した係数のこと。

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

北村(宮子)佳代子(オルタナ輪番編集長)

オルタナ輪番編集長。アヴニール・ワークス株式会社代表取締役。伊藤忠商事、IIJ、ソニー、ソニーフィナンシャルで、主としてIR・広報を経験後、独立。上場企業のアニュアルレポートや統合報告書などで数多くのトップインタビューを執筆。英国CMI認定サステナビリティ(CSR)プラクティショナー。2023年からオルタナ編集部、2024年1月からオルタナ副編集長。

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キーワード: #脱炭素

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