記事のポイント
- デンマークは2030年から農業の温室効果ガス(GHG)排出に課税する
- 2030年までにGHG排出量70%削減を達成するための政策だ
- 特に大量にGHGを排出する畜産業での削減を目的とする
デンマークはこのほど、2030年から農業の温室効果ガス(GHG)排出に課税することを発表した。世界で初めての試みだ。同国は2030年までにGHG排出量70%削減(90年比)を目指すが、特に畜産からのGHG排出が課題だった。(オルタナ副編集長=吉田広子)

国連食糧農業機関(FAO)の報告(2020年)によると、世界のGHG排出量のうち、約15%が農場からの排出が占める。なかでも、牛は、飼料となる穀物の生産過程で大量のGHGを排出するほか、げっぷや糞尿には大量のメタンガスが含まれる。
デンマークは、農家にGHG排出量(CO2換算)1トン当たり300デンマーク・クローネ(約7000円)を課税し、2035年には750デンマーク・クローネ(約1万7000円)に引き上げる。
農家には税額控除が適用されるため、控除後の実質コストは、2030年で1トン当たり120デンマーク・クローネ(約2800円)、2035年で300デンマーク・クローネ(約7000円)となる。
税収は、農家の脱炭素化の支援に充てる。
デンマークは、世界で最もオーガニック食品が流通し、有機農業が拡大しているオーガニック先進国だ。日本の目標より20年以上早い「2030年までに有機農業比率および市場シェア30%」を目指す。有機農業は、生命力のある肥沃な土壌を守り、気候変動への影響を抑えることもあって国家施策として推進されてきた。
ステファニー・ロス経済大臣は、農業への炭素税の導入にあたり、「デンマークの農業の未来に向けて明確なグリーンの方向性を定めた。私たちは、より持続可能でハイテクで効率的な農業生産のための枠組みを構築し、グリーン移行を確実にする」とコメントしている。