再エネ普及やEV化に、人権侵害や生物多様性喪失の懸念も

記事のポイント


  1. 再生可能エネルギーやEVに不可欠な鉱物資源の採掘投資が拡大している
  2. だが、先住民の権利侵害や生物多様性の喪失につながる恐れがある
  3. 国際NGOがこのほど報告書を公表し、警鐘を鳴らした

再生可能エネルギーやEV(電気自動車)に不可欠な鉱物資源の採掘投資が、先住民の権利侵害や生物多様性の喪失につながる恐れがある――。国際NGOからなる「森林・金融連合」がこのほど報告書を公表し、警鐘を鳴らした。世界では、リチウムやコバルト、ニッケルなど「移行鉱物」の需要が急増している。(オルタナ輪番編集長・吉田広子)

大手銀が鉱物採掘会社に70兆円以上を投資

リチウムやコバルト、ニッケル、銅などの鉱物は、再生可能エネルギーへの移行に向けて需要が急増している。一方で、こうした「移行鉱物(トランジション・ミネラルズ)」の採掘による先住民の土地収奪や森林破壊を引き起こすとして懸念が高まっている。

報告書「鉱業とマネー:エネルギー移行における金融の弱点」によれば、2016年から2024年の間に大手銀行は「移行鉱物」の採掘企業に対し、合計4930億ドル(約70兆円)の融資や引受を行った。さらに投資家は、2025年6月時点で2890億ドル(約40兆円)相当の社債や株式を保有していた。

報告書は、JPモルガン・チェース、バンク・オブ・アメリカ、シティ、BNPパリバの4行を、破壊的な採掘事業に最も多く融資している銀行として名指しした。一方、投資面では、ブラックロック、バンガード、キャピタル・グループが、グレンコア、ヴァーレ、BHPといった鉱業大手の社債や株式を数十億ドル規模で保有していた。

持続可能性にコミットメントしているにもかかわらず、森林と金融連合が評価した30の主要金融機関における鉱業関連の平均ESG(環境・社会・ガバナンス)スコアは、わずか22%にとどまった。さらに、多くの機関には、採掘に伴う堆積物ダムの決壊や先住民の土地収奪、森林破壊といった高リスク行為への融資を防ぐための方針すら存在しなかった。

森林と金融連合メンバーであるステファニー・ダウレン氏は「『公正な移行』には、悪質な行為や責任逃れを続ける企業に資金を注ぐのではなく、新しい資金の流れが必要だ」とコメントしている。

(この続きは)
■ブラジルではダム崩壊で多数の死傷者
■アルミ採掘は先住民の権利を侵害
■公正で持続可能な移行に資本を

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yoshida

吉田 広子(オルタナ輪番編集長)

大学卒業後、米国オレゴン大学に1年間留学(ジャーナリズム)。日本に帰国後の2007年10月、株式会社オルタナ入社。2011年~副編集長。2025年4月から現職。執筆記事一覧

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キーワード: #ビジネスと人権

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