記事のポイント
- 「サステナブル★セレクション2025」の三つ星選考会を開いた
- サステナブルな理念と手法で開発された製品/サービスを選定して、推奨する仕組みだ
- 審査の結果、アシックスやJTBなど6件が三つ星に選ばれた
オルタナ(東京・渋谷)とサステナ経営協会(東京・渋谷)は10月3日、「サステナブル★セレクション2025」の三つ星選考会を開いた。「サステナブル★セレクション」とは、サステナブル(持続可能)な理念と手法で開発された製品/サービスを選定して、推奨する仕組みだ。審査の結果、革の端切れを使用したシューズ(アシックス)や未利用魚を活用したレトルトカレー(JTB)など6件が三つ星に選ばれた。(オルタナ輪番編集長=吉田広子)

サステナブル★セレクションは、「サステナブルな製品・サービスを支援し、社会やマーケットでの存在感を高めること」を目的として、2020年に立ち上げた。
一つ星は製品/サービスそのものの持続可能性を評価し、二つ星は組織の持続可能性を評価する。三つ星は任意で応募があった二つ星の中から、三つ星選考委員がESG(環境・社会・ガバナンス)の取り組みや社会的インパクトなどを総合的に評価して選定する。
サステナブル★セレクション選定のポイントは、環境や社会問題の解決につながることだ。SDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素、サーキュラーエコノミー(循環経済)、格差是正など、サステナブル・エシカル(倫理的)な視点が、製品/サービスや経営に反映されているかどうかが判断基準になる。
2025年の三つ星選考会は10月3日、「第3回サステナブル★セレクションEXPO in東京」の会場内(東京都立産業貿易センター)で行われた。三つ星候補企業がプレゼンテーションを行い、選考委員が評価した。審査の結果、2025年は、最終的に一つ星として28件、二つ星として8件、三つ星として6件を選定した。
竹村眞一・審査委員長(ZEN大学知能情報社会学部教授/NPO法人ELP(Earth Literacy Program)代表)は、「毎回、素晴らしい事業者や取り組みに出会えることが、審査会の大きな楽しみの一つだ。いまの時代にこそ、地球の変動に柔軟に適応し、新たな産業や文化を生み出す創造力が求められている。これまでは『Artificial Intelligence(人工知能)』と呼ばれてきましたが、これからは『Alien Intelligence(異質な知能)』の時代になると考えている。人間とは異なる思考様式を持つ存在と、どう共存していくのか――。この問いこそ、サステナビリティの根幹にある。サステナブル・セレクションは、狭い意味での『持続可能性』を超え、人間らしさそのものをどう持続し、開花させていくかを問う賞であるべきだと思う。皆さんの試みから多くを学び、私たち自身も、この賞をさらに進化させていきたい」と総評した。

三つ星6件は以下の通り(五十音順)。
■ハンドルの端革をシューズに
株式会社アシックス:SKYHAND OG
発生する端革を使用したシューズを開発。自動車部品サプライヤーである豊田合成との協業で、廃棄されていた端革の活用が可能に。事業・生産拠点のある国で困難な状況にある青少年や障がい者、女性の支援に取り組む一般社団法人「アシックスファウンデーション」を設立。企業全体で環境・社会貢献に取り組む。
■地域循環の再生紙、復興にも
キンコーズ・ジャパン株式会社:おきあがみ
石川県内で回収した古紙を地産地消の再生紙「おきあがみ」として循環させる。キンコーズ・金沢尾山神社前店と県内の企業・製紙会社・紙卸問屋が連携することで生まれた。環境負荷の低減や、誰もが手に取りやすいことから環境意識の醸成に寄与する。FSC認証の取得や石川県エコリサイクル製品に認定。能登半島地震以降は、売上金の一部を義援金として寄付する。
■未利用魚をレトルトカレーに
株式会社JTB:SICSサステナブルラウンジ/クセモノズ
瀬戸内海で急増するハモと、香川県の特産品である唐辛子・香川本鷹を活用したレトルトカレーを、高松市や地元小学校と共同開発。気候変動による漁獲量の減少や魚種の変化、漁業関係者の所得減少、フードロスといった社会課題に取り組む。県内店舗で販売することで、地元経済にも貢献。組織としては、人権尊重とDEIB を企業価値向上の重要要素と位置づけ、多様な人財の活躍を推進している。
■宿泊時のCO2排出をオフセット
株式会社スーパーホテル:CO2実質ゼロ泊
再エネ活用やクレジットにより100%オフセットする「CO2実質ゼロ泊」を展開。大手ホテルチェーン初の取り組みで、全176 施設宿泊分の CO2 排出量(スコープ1、2)「実質ゼロ」を実現した。地域活性化ともリンクさせ、J‐ クレジットの購入をはじめ、ヒノキオイルや木材などCSV 経営の一環として地域資源の活用を推進する。
■100%植物由来の多機能オイル
株式会社storage:haCo ヴィーガンオイル
環境や動物福祉にこだわり、機能性も追求した100%植物由来のヴィーガン多機能オイルを開発。ヴィーガン認証とクルエルティフリー認証を取得し、売上高の一部は動物保護団体へ寄付する。組織としては、廃材アートの活用やカラー剤容器の再資源化を通じて循環型社会の構築に貢献。多国籍な人材が働きやすい制度の構築など、持続可能な職場づくりも進める。
■ソーシャルインパクトを最大に
デコボコベース株式会社:障害者自立支援事業となる、児童発達支援「ハッピーテラス」、放課後等デイサービス「ハッピーテラスキッズ」、就労移行支援「ディーキャリア」
ビジョンである「凸凹が活きる社会を創る。」実現のため「ソーシャルフランチャイズ」という新しい概念のもと、年齢で分断されがちな障がい児(者)支援を包括的(児童発達支援、放課後等デイサービス、移行就労支援など)に全国で運営。取締役会でソーシャルインパクトを定期的に評価し事業や組織改善に生かす「インパクトマネジメント」を導入。多角的な視点による意思決定を促すため、DEIB を推進する。
■ ユース賞にSHIROや「バターのいとこ」など

併せて、学生コミュニティ「オルタナユース」によるユース賞の発表も行われた。学生の消費行動から社会にサステナブルな潮流をつくるために、独自の選定基準「パーソナライズ性」「波及力」「学びや体験」の観点で、サステナブルな製品・サービス、取り組みを選定した。
ユース賞は以下の通り。
【ユース賞大賞】【オルタナユース賞<インクルーシブ部門>】
■廃棄を生み出さない仕組みづくり

株式会社シロ:SHIRO FRAGRANCE ボディミスト
・香りの種類が豊富で自分らしさを表現できる
・北海道砂川市で社会課題に向き合うモノづくりについての体験施設を運営
・環境配慮パッケージ、廃棄を減らす取り組み
【オルタナユース賞<インフルエンス部門>】
■無脂肪乳が那須の人気スイーツに

株式会社GOOD NEWS:バターのいとこ
・豊かなフレーバー展開で広がる選択の楽しみ
・「バターのいとこ」という商品名のキャッチーさがSNSや口コミで取り上げられるきっかけになっている
・那須発ブランドとしての地域性や、副産物の無脂肪乳を活かすストーリーが共感を呼ぶ
【オルタナユース賞<インスピレーション部門>】
■廃棄される茎が、学びのきっかけになる紙に

ミヤザワ株式会社:バナナペーパーグッズ
・豊富な製品・カラーバリエーション
・持っているだけで話題になる材質とフェアトレード認証のノート
・原料の産地や作り方を全て公開。買うことが地域支援や資源の循環につながる
【オルタナユース応援賞】
■ポップなデザインで学ぶきっかけに

株式会社ovgo:ovgo Baker(ヴィーガンクッキー)
・豊富なフレーバー展開、すべての商品がヴィーガン対応である点から、消費者が自分の嗜好やライフスタイルに合わせて自由に選べる
・かわいい店内やパッケージでSNS映え&ブランド全体での取り組みを積極的に発信
・オンラインショップでの食品エコ指標の明示・店舗での購買体験を通じたエコ施策
■初めての一人暮らしで始める自然なお掃除
ミヨシ石鹸株式会社:洗濯用石鹸「そよ風」+「おそうじ手帳」
・界面活性剤不使用で肌に優しく、多くの人が使える
・他の人にすすめたくなる自然素材
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