オルタナは8月20日、サステナ経営塾21期第5回を開いた。第1講には、ネスレ日本の嘉納未來マーケティング&コミュニケーションズ本部 執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長が登壇し、「ネスレ日本のCSV戦略」について講義した。講義レポートの全文は下記の通り。

■世界185カ国に広がるネスレ製品
本日は、ネスレがどのような考えのもとでサステナビリティに取り組んでいるのかについて、お話しさせていただきます。
ネスレ製品は現在、世界185カ国で展開されています。事業所を持たない国でも、周辺地域からの販売や代理店による流通などを通じて消費者に届けられています。
ネスレのブランドは、コーヒーのネスカフェやネスプレッソ、チョコレートのキットカットやミロなどを含め、2000以上に上ります。
ネスレの歴史は約150年前にさかのぼります。創業者のアンリ・ネスレは薬剤師として「母乳の代替食品を作りたい」と研究を重ね、乳児用シリアルを開発しました。当時のヨーロッパでは早産などにより母乳がでないことで乳幼児の死亡率が高く、4人に1人が栄養不足で命を落としていました。
アンリが開発した製品は、スイスからヨーロッパ、アメリカ、アジア、アフリカへと急速に広がっていきました。コーポレートスローガン「Good Food, Good Life」には、「食を通じて人々の人生を豊かにしたい」という思いが込められています。
ネスレは、練乳を製造していたスイス企業とアンリ・ネスレの会社が合併して誕生しました。日本ではあまり馴染みがありませんが、世界的には「ミルクの会社」としても知られています。
その後は、ネスカフェといった自社のイノベーションに加え、マギー、フリスキー、サンペレグリノ、ペリエ、ピュリナなどをグループに迎え入れ、成長を続けてきました。近年では栄養補助食品や健康栄養分野を拡大し、ブルーボトルコーヒーをグループに迎え入れたり、スターバックスとのアライアンスにより、コーヒーの展開が広がっています。
■ネスレのパーパスとCSV
ネスレは創業150周年を迎えた約10年前に「パーパス」を再定義しました。「食の持つ力で現在そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」というパーパスには、3つのポイントがあります。
一つは「食の持つ力(UNLOCK THE POWER OF FOOD)」で、食の力を解き放つことを意味します。二つ目は「現在」。製品やサービスなどを通じて栄養、健康、ウェルネスの観点で、今のお客様の生活の質を高めることを目指します。三つ目は「これからの世代」。未来の消費者にも質の高い食品や飲料を提供し続けるというコミットメントであり、サステナビリティを示しています。
このパーパスは、「家族とペット」「コミュニティ」「人と地球」という3つの分野を重点領域としています。そして、その実現を支える根底には「Respect」の価値観があります。
CSV(Creating Shared Value)は「経済的価値と社会的価値を同時に生み出す」という考え方であり、本業を通じて社会課題を解決することを目指します。2005年頃にピーター・ブラベック元CEOが提唱しました。「CSRの先」を行くものとして位置付けられています。
ネスレは「Think Globally, Act Locally」を体現しています。大きな戦略は本社から示されますが、それを具体的に実現するのは各国の現地法人です。「Consumer is Local」という考え方のもと、各国の現地の消費者の味や香り、購買行動を理解し、グローバルな研究開発の成果をローカライズしています。スイス本社との会議でも現地法人の意見が尊重されています。
また、ネスレは、「リジェネレーション」というコミットメントを掲げています。これは「大規模な再生可能なフードシステムを推進する」というコミットメントであり、再生農業を通じて温室効果ガス削減、生物多様性保全、水資源保護を目指すものです。サステナビリティが資源利用分を元に戻す(現状を維持する)考え方であるのに対し、リジェネレーションは失われたものを再生・復元することを目的としています。
ネスレ日本は1913年に創業しました。ビジョンは「みんなのHealthiNesとHappiNesを支え、真の“グローカル”カンパニーになる」を掲げています。
■コーヒー1杯から始まる未来
■多様なサステナビリティの取り組み
■パーパスの実現に向けたCSV実践のために

