記事のポイント
- 世界のESG投資はPRI署名機関で128兆ドルの規模、日本も6割を占める
- 2006年にPRIが立ち上がったことで、年金基金などがESG投資に参入した
- 投資判断にESG施策を組み込み、「情報開示なければ投資しない」姿勢広がる
オルタナは10月15日、サステナ経営塾21期下期第1回を開いた。第2講には、NPO法人日本サステナブル投資フォーム(JSIF)エグゼキュティブ・アドバイザーの荒井勝氏が登壇し「ESG情報発信とIR戦略」について講義した。講義レポートの全文は下記の通り。

■ESG投資、日本では運用額の60%を占める規模に
世界のESG投資の状況はどのようになっているか。2006年にスタートした責任投資原則(PRI)の署名機関は2025月2月現在で5296で、資産額は128.4兆ドルとなっている。国別の署名機関数をみると、上位に米国、英国、フランスが並び、日本は12位となっている。ESG投資の世界に占める割合は資産比率で75%に達し、運用資産総額トップ20のうち13が署名している。
主要国のESG投資についてアンケートをとると、運用額のうちのESG投資の占める割合は日本で34%(22年時点)だ。しかし、この数字は低めに出ており我々の集計では60%ほどに達している。一方で、米国は22年で13%と従来に比べて減少しており、これはグリーンウォッシュなどの問題に対応していくためにESG投資の定義を厳しくしているためだ。
特に欧州はルールの厳格化を進めている。欧州のSFDR(サステナブルファイナンス開示規則)では、ファンドを環境的または社会的特性を推進する「8条ファンド」、より定義を厳しくして持続可能な投資を主目的とする「9条ファンド」、そして環境的または社会的特性を推進しない「6条ファンド」の3つに分類。8条ファンドは56.8%、9条ファンドは3.1%あり、60%近くのファンドでESGが普及している。
日本サステナブル投資フォーラムが発行している白書によると、日本のサステナブル投資残高が625兆円に達している。マーケットが好調に推移して日本株全体が上がったことで、ESGファンドにも寄与した。東証プライム市場の時価総額は970兆円であり、サステナ投資残高が相当割合を占めていることがわかる。

