記事のポイント
- NGOなど135団体が経産・環境・文科各大臣に人工芝の生産・流通の原則禁止を求めた
- 人工芝は「環境汚染・健康障害を起こすマイクロ・ナノプラスチックの主要な発生源」
- 書簡提出の背景には、各地で人工芝化が進むことによる強い危機感がある
「減プラスチック社会を実現するNGOネットワーク」など135団体が12月8日、人工芝の生産や流通禁止を求め、公開書簡を提出した。提出先は経済産業大臣、環境大臣、文部科学大臣だ。NGOらは、人工芝には健康リスクに関する重大な懸念があると主張している。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

提出した公開書簡で135団体は、⾚澤亮正経産大臣と⽯原宏⾼環境大臣には「⽣産や流通を遅くとも2030 年までに原則禁⽌すること」を求めている。松本洋平文科大臣には禁止に加え、教育委員会などへの指導や外郭団体である日本スポーツ振興会による人工芝への助成金廃止も求めた。
背景には、近年、全国各地の学校や公園で人工芝の敷設が進んでいることがある。園児が遊ぶ園庭や、子どもたちが長い時間を過ごす校庭、さらには身近な公園にまで人工芝が広がっている。その結果、有害な化学物質を含む大量のマイクロプラスチックが放出されかねないとの強い危機感が高まっている。
公開書簡を提出したNGOの1つであるNPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議(東京・江東)の木村―黒田純子理事は「人工芝は子どもに有害でしかない。禁止するべきプラスチック製品だ」と強調。「環境ホルモン(内分泌撹乱物質)や発がん性物質など有害化学物質を放出するだけでなく、環境汚染・健康障害を起こすマイクロ・ナノプラスチックの主要な発生源」であると指摘する。
■ 欧州では天然芝への回帰が進む
ナノプラスチックとはマイクロプラスチックがさらに微細化したものだ。近年ナノプラスチックに関する研究が進み、健康リスクも徐々に明らかになりつつある。
国際プラスチック条約はいまだ最終合意に至らず、締結は来年以降に持ち越された。しかし、多くの国々は有害性の高いプラスチックを削減していく方向性では一致しており、国際社会全体としてプラスチック削減に向かう流れは強まっている。
欧州では、丈の長い人工芝のすき間に充填するゴムチップを、それ自体がマイクロプラスチックだとして2031年までに禁止することが決まっている。そのため、天然芝への回帰が進みつつある。米国でも多くの州で、PFASを理由に人工芝への規制が進む。
しかし、日本では人工芝に助成金を出し、敷設を奨励している。多くの地方自治体も、テニスコートやサッカー場、公園、広場、学校などの人工芝化に余念がない。日本のプラスチック政策とマイクロプラスチック対策は、一体どこへ向かっているのだろうか。



