記事のポイント
- ヒトの心臓組織から9種類のマイクロプラスチックが見つかった
- ほかにも内臓や、血液や母乳、精液からもマイクロプラを検出した
- マイクロプラがヒトの健康に及ぼす影響の研究も徐々に進んできた
米学術誌によると、ヒトの心臓からマイクロプラスチックが検出された。すでに胎盤や肺、肝臓、腎臓などの内臓や、血液や母乳、精液からも見つかり、プラが人体におよぼす影響も徐々に明らかになってきている。マイクロプラスチック問題は海洋汚染や生態系への影響を問題視することが多いが、人体への影響が明らかになったことで、今後、行政やメーカー各社の姿勢も問われそうだ。(オルタナ編集委員・栗岡理子)
学術誌「エンバイロメンタル サイエンス アンド テクノロジー」に発表された研究によると、中国の首都医科大学(北京市)などの研究チームは、病院で心臓手術を受けた15人の患者の心臓組織と術前・術後の血液からプラスチック微小粒子(マイクロプラスチック)を検出した。
5種類の心臓組織から9種類のマイクロプラスチックが検出された。サイズは最大で0.469 ミリメートル、個数は0から数万個までと人や組織ごとに差がある。最も多く見つかった樹脂はポリエチレンテレフタレート(77%)で、次いでポリウレタン(12%)だ。
ポリエチレンテレフタレートはペットボトルやポリエステル繊維などに、ポリウレタンは自動車シートや伸縮性に富んだ繊維などに日常的に使われている。
術前・術後の血液からも9種類のマイクロプラスチックは見つかったが、最大サイズは0.184ミリメートルとかなり小さい。術後に樹脂の種類や数が増えた人が多く、手術中に体内に紛れ込んだと考えられる。
■母乳や精液からも検出
マイクロプラスチックはこれまで人間の内臓や血液、母乳、精液などから見つかっている。例えば、母乳からは2022年に検出され(参考記事:イタリアで母乳から初めてマイクロプラ検出)、今年3月には精液と精巣からの検出も発表された。
サイズは0.02から0.287ミリメートルで、精液中のそれはポリエチレンとポリ塩化ビニルが多く、精巣内にはポリスチレンが多かった。ポリエチレンもポリスチレンも食品の容器包装などによく使われる樹脂だ。
■健康への影響は?
マイクロプラスチックの体内への侵入経路や影響についても、研究が徐々に進みつつある。例えば、食品や水と一緒に摂取したものは小腸から血管やリンパ管に侵入する。(参考記事:微小プラが小腸から体内に侵入か、人体への影響は)
京都府立医科大などの研究チームによる動物実験では、高脂肪食と一緒にマイクロプラスチック入りの水を与えられたマウスは糖尿病や脂質異常症、脂肪肝が有意に悪化した。
一方、大気から肺へ取り込まれたマイクロプラスチックは肺を損傷する可能性もあるようだ。車の走行で飛び散るタイヤの摩耗粉が肺線維症を誘発することが、昨年学術誌に発表された。
脳や免疫系への影響も研究されている。プラスチックの添加剤も体内で見つかっているため、化学物質による影響も見逃せない。
影響がより顕著に出現したときにはもはや手遅れだ。対策を検討している業界も一部あるようだが、国や産業界・企業には早急に対応してほしいものだ。