記事のポイント
- 人間の母乳からマイクロプラスチックが見つかる
- 大半がプラスチックの断片で青色が多い
- 妊婦の年齢や生活スタイルとの関連は不明
イタリアで母乳から初めてマイクロプラスチックが検出された。欧州の科学雑誌によると、ローマの病院で出産した健康な母親34人から採取した母乳のうち、26人から見つかったという。赤ちゃんの健康への影響や、身体に入り込んだ経路は不明だが、人がマイクロプラを避けることはもはや困難であることは確かなようだ。(オルタナ編集委員・栗岡理子)

■見つかった粒子の約4割は青色の破片
高分子科学の学術誌「Polymers」誌に掲載された研究によると、最も多く検出されたプラスチックはポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレンで、サイズは2から12マイクロメートル。イタリアのローマ・バイオ医療大学などの研究チームは2マイクロメートル未満の粒子を検出できなかったため、より小さい粒子も存在する可能性があるという。
さらに、プラスチックの大半は不規則な破片で、球体も発見されたが、フィルムや繊維状のものは見つからなかった。9割が着色されており、青(36%)、オレンジ/黄(17%)、赤(11%)、茶(10%)の順に多い。
しかし、この結果だけを見て、母乳より粉ミルクの方が安全だと考えるのは早計だ。最近の研究では、牛乳やプラ製哺乳瓶からマイクロプラが検出されていることが分かっている。特に一部の哺乳瓶からは、マイクロプラの大量発生が確認されている。
■食事などとの関連は不明
今回、調査過程でプラスチックを使用せずに集められた母乳のデータは、患者の年齢やプラスチックを含むパーソナルケア製品の使用、魚介類やプラスチックで包装された飲食物の摂取などとの関連で分析された。関連は特定できなかったが、マイクロプラはどこにでも存在するため、避けるのは困難であることが示唆された。
また、これらが赤ちゃんの健康に与える影響もまだわかっていない。なお、同研究を率いたアントニオ・ラグサ氏は2020年、胎盤からマイクロプラを見つけている。
マイクロプラの摂取を避けることが現状では難しいにせよ、妊婦や乳幼児の曝露を減らすための対策を早急に進める必要がある。そのためには、破片化しやすい環境でのプラスチック使用や日用品にマイクロプラを安易に添加することなどは、極力控えることが重要だろう。