記事のポイント
- 人工芝や化粧品などに意図的添加したマイクロプラスチックへのEUの規制が前進
- 欧州議会と理事会による3カ月の精査で、問題がなければ正式決定する
- 環境NGOは歓迎しつつも、猶予期間が長すぎると批判している
EUの政策執行機関である欧州委員会はこのほど、マイクロプラスチックを意図的に添加した製品のEU市場への投入制限に向け、歩みを進めた。REACH(化学物質の登録、評価、認可及び制限に関する規則)に関する協議で、EU加盟国が委員会の提案に賛成票を投じたのだ。この後、欧州議会とEU理事会による3カ月の精査を経て、正式な採択となる。これにより、意図的にマイクロプラスチックを製品に加えていた多くの企業は、対応を迫られることになる。(オルタナ編集委員/栗岡理子)
■規制対象は「意図的添加のマイクロプラ」
EUが禁止する予定のマイクロプラスチックは、人工芝や化粧品、洗剤、肥料、塗料などに意図的に加えられる微小なプラスチックだ。マイクロプラスチックには意図せずに放出してしまうものもあるが、機能向上などのため意図的に製品に添加されるものもある。例えば、人工芝に用いられる充填材(樹脂製チップ)は衝撃を和らげるなどの目的で、また化粧品のマイクロビーズは肌に馴染みやすくするなどの目的で使われる。今回規制されるのは、重量の0.01%を超えるマイクロプラスチックを意図的に添加した製品の市場への投入だ。
企業がこの規制に対応するためには期間が必要であるとして、それぞれ移行までの猶予期間が決まっている。例えば、人工芝に使われるマイクロプラスチックの猶予期間は8年、メイクアップ用化粧品に加えられるそれは12年だ。これに対し、欧州環境NGOの連合体である Rethink Plastic Allianceは今回の決定を歓迎しながらも、「猶予期間が過度に長い」と批判している。
■対象マイクロプラはEU全体で年間約4万2000トン
欧州委員会は2017年、欧州化学品庁(ECHA)に対し、製品に意図的に添加されるマイクロプラスチックについて、EUレベルで規制措置を講じるための科学的根拠の評価を求めた。これに対しECHAは2019年1月、製品に意図的に使われるマイクロプラスチックに対する幅広い制限を提案した。
マイクロプラスチックは、いったん環境中に放出されると、長期にわたり残留し回収もできない。生物の体内に取り込まれやすく、食物連鎖に入り込むことから、健康や環境にリスクがあると考えられるためだ。
対象となるマイクロプラスチックは、EU全体で年間約4万2000トン。このうち、最も大きな汚染源は人工芝の充填材で、年間最大1万6000トンと試算されている。
マイクロプラスチックが人間の健康にリスクをもたらすという証拠も増えてきた。EUで法制化されれば、日本への影響も必至だ。日本企業にはEUの猶予期間を前倒しにして、製品からマイクロプラスチックを排除してほしいものだ。