記事のポイント
- 化石燃料企業によるスポーツ界へのスポンサー契約を問題視する声が高まっている
- 化石燃料による温室効果ガスの排出は、スポーツ自体の存続を脅かすからだ
- 矛先は、化石燃料プロジェクトに投融資する金融機関にも向けられている
化石燃料企業が、スポーツチームや大会とスポンサー契約を結び広告を出すことへの抗議の声が広がる。ミラノ・コルティナ冬季五輪では、アスリートらが化石燃料企業とのスポンサー契約の撤回を求めた。米国でも現地時間の2月17日、野球やアメフトなどのチームスポンサーが化石燃料企業とスポンサー契約を結んでいることを「スポーツウォッシング」だとする抗議活動が起きた。矛先は、石油・ガス企業だけでなく、プロジェクトに投融資する金融機関にも向く。(オルタナ輪番編集長=北村佳代子)

石油・ガスなど、地球温暖化の直接的な要因となっている温室効果ガス(GHG)を多く排出する企業が、スポーツ大会やチームのスポンサーとなって自社を宣伝することに、抗議の声が広がっている。
米ハーバード大学で地球・環境科学を研究するナオミ・オレスケス教授は、「スポーツウォッシング企業は、ファンの愛するチームに資金を提供し、人々の好意をお金で買いながら、化石燃料の排出といった、真に悪い行いから人々の目を逸らそうとしている」と指摘する。
「気候変動によって、温暖化で雪がとけたり、耐えがたいほど気温が上がったりしている。化石燃料企業は、野球やスキーといった私たちが大切にしているスポーツを困難にする製品を宣伝しているのだ」(同)
こうした指摘も踏まえ、欧州では2024年に、ベルギーのマラソン大会やノルウェーのサッカー連盟が、それまでスポンサーだった化石燃料企業との契約を終了するなどの動きも見られる。
■ミラノ・コルティナ冬季五輪でも
地球温暖化の影響をすでに大きく受けているのが、スキーなどのウィンタースポーツだ。現在開催中のミラノ・コルティナ冬季五輪には、主要スポンサーの1社に、イタリアの石油・ガス大手のENI社がある。
温暖化で雪が減少しているのに、その温暖化をもたらす事業を展開する企業がスポンサーとなって自社を宣伝しているのは「完全なる矛盾」と、グリーンランドのバイアスロン選手ウカレウ・スレッターマーク氏は話す。
コルティナ五輪に関しては、スキー選手らが2万1千人の署名を集め、化石燃料企業によるスポンサー契約を撤回するよう国際オリンピック委員会(IOC)に請願書を提出した。ほかにも、約90人のオリンピック選手とパラリンピック選手と、将来オリンピックへの出場を目指す40人以上のアスリートが、IOCに宛てて、同様の要請を提出している。
冬季スポーツでの化石燃料広告に関しては、フランスでは83%が、イタリアでは77%が、英国では77%が「廃止することを支持」と答えたとの調査もある。
参考記事:2026冬季五輪開催地イタリア、5年で250を超えるスキー場が閉鎖
■「気候変動はスポーツの未来にとって脅威」
この動きは、冬季スポーツだけではない。米国では2月17日(現地時間)、全米10カ所の野球・アメフト・サッカー・バスケットボールチームのスタジアムで、スポーツウォッシングに対する抗議活動が起きた。
米国の円盤投げ選手で、2028年のロサンゼルス・オリンピックへの出場を目指してトレーニング中のサム・マティス選手は、「この5年間、洪水や山火事の煙のためにトレーニングを中止せざるを得なかった。陸上トラックの表面が華氏140℉(摂氏60℃)を超えるような酷暑の中、競技しなければならなかったこともあった。競技中に熱中症になったことだってある」と話す。
「化石燃料の排出によって引き起こされた気候変動は、今、まさにスポーツに影響を与えており、スポーツの未来にとっても直接的な脅威となっている。大気を汚染し、スポーツを危険にさらす企業は、私たちが愛するチームや競技と契約をするべきではない」(マティス選手)
■野球・バスケ・アメフト・サッカーチームも「スポーツウォッシュ」
米国で抗議活動が起きた10カ所の競技場はすべて、化石燃料関連企業とスポンサー契約を結んでいるチームのものだ。
野球ではロサンゼルス・ドジャース、ニューヨーク・メッツなどメジャーリーグの5チームが、バスケットボールではNBAの2チームが、サッカーではFIFAワールドカップとMLS所属の1チームが、アメフトではNFLの1チームが、化石燃料企業とスポンサー契約を結んでおり、環境NGOらは「スポーツウォッシング」だと非難した。

(c) Jane Hickman
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