記事のポイント
- 渋谷区の担当者はハッカー集団「アノニマス」とは対話しない方針であることを明らかにした
- アノニマスの妨害行為で、同区のサイトは1月3日夜から接続不良に
- アノニマスは同区の路上生活者への対応を批判している
国際ハッカー集団「アノニマス」の妨害行為を受けた渋谷区の広報担当者は、同集団との対話は「考えていない」と話した。アノニマスからの妨害行為によって、1月3日17時頃から同区の公式サイトに接続しづらい状況が続いている。現在も24時間体制で原因の調査と復旧対応に取り組む。アノニマスは同区の路上生活者への対応を批判しているが、同区の広報担当者は「ほかの自治体よりも手厚いサービスを行っている。対話は考えていない」とオルタナの取材に答えた。(オルタナS編集長=池田 真隆)

アノニマスは世界各地でハッキングを行う国際ハッカー集団だ。主に政治や気候変動、人権問題への抗議を理由にサイバー攻撃を仕掛ける。
素性は不明だが、最近ではウクライナに侵攻したロシアにサイバー攻撃を行った。今回、アノニマスが渋谷区を狙ったのは、同区の路上生活者への対応がきっかけだ。
渋谷区は昨年10月25日、東京都と行う再開発事業の準備工事を名目に、同区の美竹公園の利用を禁止して、仮囲いを設置した。この地区では、文化施設やインクルーシブな都市公園などの建設を予定している。
仮囲いを設置した25日には、美竹公園で4人の路上生活者が生活していた。区は福祉事務所を通じて4人の内3人に区が借り上げている民間アパートを案内した。その結果、2人がアパートでの生活を始めた。
だが、仮囲いを設置しても美竹公園内で生活を続ける路上生活者はおり、区としては住まいの確保や地域生活への移行を支援する内容を書いた手紙を渡すなどの対応を続けた。
事態が進展したのは昨年12月14日。区は仮囲いの追加設置を開始した。準備工事を行うに当たり、通行人の安全と安全な工事現場の確保、妨害行為への対抗を目的とした。
仮囲いの追加設置を行うに当たり、公園内で生活する路上生活者に物品の除去を求めていたが、期日までに応じなかった。そうして、12月20日、区は行政代執行を実施して、物品を除去した。
アノニマスはこの対応を問題視して、渋谷区にサイバー攻撃を仕掛けたと見られている。1月3日には同集団のTwitterアカウントで、「ホームレス状態の人のシェルターを封鎖するなら、ウェブサイトを封鎖する」とサイバー攻撃を示唆する内容を投稿した。同日の17時頃から接続しづらい状態になった。
区は警察と連携して24時間体制で原因の特定と復旧対応に取り組む。問題発生当初と比べると接続しやすくなったが、現時点でも完全復旧には至っていない。この攻撃によって、何らかの情報が流出したかは「確認中」と広報担当者は答えた。
■「渋谷区はほかの自治体よりも手厚いサービスを行ってきた」
アノニマスは路上生活者の救済を求めるが、区は同集団との対話は検討していない。広報担当者は、「自力で復旧作業に当たっている。アノニマス側から連絡は来ていないし、こちらから対話を求めることは考えていない」と話した。
さらに、路上生活者への支援は「ほかの自治体よりも手厚く行ってきた」と訴える。区は2016年から「ハウジングファースト事業」を展開してきた。路上生活者を対象に、住まいの確保や地域生活への移行を支援するものだ。渋谷区の独自事業として行う。
2016年から2021年までの5年間の実績としては、2581人に巡回相談し、シェルターに88人が入居した。62人がアパートに入居して地域生活に移行した。
区としては、公園は「シェルターではない」とし、「個別のアパートを用意している」と主張する。
ホームレスの中で今回の渋谷区の提案に応じなかった人の意見も注意深く聞き、区の対応の妥当性を検討する姿勢は必要と感じる一方、公園は公共施設であり、僅かとはいえ私物を持ち込んでスペースを占拠することは容認しないという区の対応には(緊急避難を除いて)妥当性はあると感じます。いずれにしてもWebサイトのハッキングという抗議の手法はまずいと思います。