もはや環境難民は他人事ではない・第3回
ツバル・オーバービュー――環境難民の克服は「他人任せ」をやめることから

平均海抜わずか2メートルの太平洋の島国・ツバルは、地球温暖化による海面上昇で海に沈むといわれ、環境難民リスクを世界に知らしめた。ところがその後、日本では「ツバルの危機は、島の人口増加などのローカルな要因も大きい」という論調が強まり、気候変動を危惧する声は弱まったようにも見える。ツバルの現状と被害を啓発する活動を続けるNPO「ツバル・オーバービュー」の遠藤秀一代表理事に、ツバルの実情と展望を聞いた。
――ツバルが直面する危機について、最近は気候変動よりも島での人間活動による影響が強調して伝えられている。中には「『海面上昇で沈む』は誤解だ」という論調もあるが

要因が何であれ、ツバルが直ちに水没することはないが、もし平均海面が約1メートル上昇すれば水没する面積が増加することは避けられない。島の内陸部では50年も前から、雨が地下にたまった淡水に海水が混じるようになり、飲み水やタロイモ栽培などに支障が出始めていた。これは海面上昇の影響ではないかと言われる。
そして1990年以降は海岸浸食が顕在化した。これは海面上昇が原因とする見方がある一方、サンゴ礁の島は海流で砂が運ばれて島の形が絶えず変化するため、海岸浸食と海面上昇を直ちに結び付けるのは誤りだとする見方もある。
ところが海面上昇の影響に否定的な学者の中にも、ヤシなどが育ち、島の陸地の核となる部分の約半分が海岸浸食で失われている島の姿は自然の営みから逸脱しているのでは、と指摘する人がいる。
そして海岸浸食の要因としてもう一つ、有力視されているのが人間活動の影響だ。サンゴ礁の島は海水中の珊瑚や貝殻などが細かくなった生物由来の砂で成り立っている。中でも石灰質の殻を作る有孔虫(星砂)による砂の供給が7割を占める場所もあり、非常に重要な要素だ。