
障がい者雇用について考えるシンポジウム「これから私たちにできること~障がい者と関わる家族・ビジネスマンとして~」が23日、日本財団(東京・港)で開催された。自閉症の長男とうつ病の妻をサポートしてきた東レ経営研究所の佐々木常夫特別顧問と、障がい者雇用に取り組むアイエスエフネットグループ(東京・港)の渡辺幸義代表が対談した。
佐々木氏は、東京大学経済学部卒業後、東レに入社。2001年に東レ同期トップで取締役となり、東レ経営研究所社長を経て、現在は特別顧問を務める。
会社では大阪・東京と6度の転勤、破綻会社の再建や事業改革などで多忙を極めた。一方で、自閉症の長男の世話に加えて、肝臓病とうつ病にかかった妻が43回もの入院と3度の自殺未遂を起こす。
そうした難しい局面をどう乗り越えたのか。
佐々木は「家族はかけがえのない存在で、無償の愛を与えられる。人間は、運命を受け入れて生きる『決意』と『覚悟』が必要だ。自分はどういう生き方をするのか、働き方をしていくのか、節目節目で真剣に考える。だらだらとしていては、幸せを見失ってしまう」と語る。
情報通信システムの設計・施工などを行うアイエスエフネットグループは、ニート、引きこもり、障がい者など就労困難者を積極的に雇用する「20大雇用」を掲げている。
渡辺代表は「障がい者雇用には、トップの理解と、親との話し合いが欠かせない。受け入れる企業側は、全く別の組織をつくるつもりで体制を整えていく必要がある」という。
会場から法定雇用率の引き上げに関する質問が挙がると、「障がい者の法定雇用率は1.8%と定められているが、雇用するよりも、不足した人数分の納付金を支払った方が安い。雇用率の引き上げではなく、罰則規定を厳しくすべき」と答えた。
シンポジウムには100人以上が参加した。(オルタナ編集部=吉田広子)