音のない3・11、被災地のろう者を追ったドキュメンタリー

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「架け橋 ~きこえなかった3.11~」のワンシーン。手話で情報をやり取りしあう被災地のろう者たち

ろう者を追ったドキュメンタリー映画を制作してきた今村彩子監督が、映画「架け橋 ~きこえなかった3.11~」を完成させた。耳の聞こえない人は、震災や津波が来ても音による警報情報が得られず、避難が困難だ。今村監督は避難所でのろう者や身体に不自由のある人への取材を通して、聞こえない人にも区別なく情報を等しく伝えることの大切さを描き出した。(フリーライター・今一生)

今村監督は、自身もろう者で、ろう者を取材したドキュメンタリー映画「珈琲とエンピツ」などを制作してきた。本作では、東日本大震災で被災したろう者の現状を1年半取材し、各地で上映してきた「架け橋」シリーズを劇場用長編映画として再編集した。

この映画に先立って制作された短編「音のない3・11 ~被災地にろう者もいた~」には、宮城県岩沼市に住んでいる菊地信子さんが、地震が起きた時、地元の人に身振りで津波が来るから逃げるように言われて避難したエピソードが紹介されている。

その後、津波が来て、信子さんの家は流された。地元の人が信子さんに伝えなかったら、信子さん夫婦は津波にのまれ、亡くなっていたかもしれない。

監督自身も取材中に震度6の余震を経験し、情報が得られない恐怖を感じた。

一連の今村作品を制作したプロデューサーの阿久津真美さんは、有事の際のろう者の置かれた環境について危惧している。

「筆談で伝える余裕もなかったので、近所の方が教えて誘導してくれたり、避難所の館内放送が聞こえないために食糧配給をもらい損ねたりしたこともありました。車椅子利用者のようにはっきりと支援が必要だと周囲に気付かれないのがろう者なのです」

避難情報を得にくかったのは、ろう者だけではない。目の見えない人や、独居の高齢者、ひきこもりの若者なども同じだ。

情報が届いても、病院で入院生活をしていた人や刑務所や少年院などで暮らしていた人、児童相談所に保護されていた子どもなどの中にも、逃げ遅れた人がいるかもしれない。

今村監督の映画は、社会から隔絶されて有事の際に避難するのが困難になるさまざまな「情報弱者」たちの存在を想起させる。

「架け橋 ~きこえなかった3.11~」は、 新宿3丁目の新宿K’s cinemaで8月17日から23日で毎朝10時から上映予定。初日には監督の舞台挨拶もある。

◆今村彩子 公式サイト
◆新宿ケイズシネマでアンコール上映決定
9/14(土)〜9/27(金)の2週間、毎日11:00&12:50の2回上映
※8/17〜23の特別鑑賞券も、そのまま使えます

2013年8月16日(金)14:46

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