揺れ幅最大62%減、繰り返す余震に耐える

住友ゴム工業は、同社が開発した最新の住宅用制震ダンパー「MIRAIE(ミライエ)」の実証実験を独立行政法人防災科学技術研究所(茨城県つくば市)で行った。阪神淡路大震災の本震と余震を再現したところ、MIRAIEがない場合に比べて、最大62%もの揺れ幅を低減していることが分かった。(オルタナ関西支局=赤司研介)

実験住宅は、ほぼ正方形(14.5m×15m)の振動台テーブルの上に、日本の木造住宅で最もスタンダードな「在来軸組工法」で建てられた、総延べ床面積100平米(約30坪)二階建ての建物を試験体として準備。

ここに本震として、「キラーパルス(*)」が含まれており、木造戸建て住宅に最も厳しいとされる阪神淡路大震災で観測された地震波(震度6強)を再現した揺れを2回起こした。

さらに、余震として新潟中越地震で観測された地震波(震度6強)を再現した揺れを5回繰り返すことで建物に生じる損傷の度合いを、「MIRAIEあり」の場合と「MIRAIEなし」の場合で比較する。

*共振現象によって思いがけない損傷被害を引き起こす地震の揺れのこと

MIRAIEあり
MIRAIEなし

準備された試験体の耐震等級は「3」。数字が大きくなるほどその建物が強いことを示しており、最高等級が耐震等級「3」である。

それでは、実験の様子を収めたムービーを見てみよう。

結果はご覧の通り。7回目には「MIRAIEなし」の外壁面が大きく損傷したのが確認された。そのほか、筋かいの上下に取り付けられた筋かい金物のビスが抜けて機能が失われ、内壁面の石膏ボードも損壊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのなかで、特に注目すべきは筋かいなどの接続部分の損傷具合。「MIRAIEなし」では、筋かいが折れてしまっているのに対し、「MIRAIEあり」は、筋かいなどの重要部分にはほとんど損傷が見られなかった。

壁面やクロスなどの損傷は比較的簡単に直すことができるが、筋かい、柱などの接合部や躯体は一度壊れると、修復するのに多大な手間と費用がかかってしまう。建物自体の耐力が低下し、それ以降は本来の耐震性能を発揮できなくなるため危険なのだ。

また、「MIRAIE有無変形量」のグラフを見てもその差は歴然である。

 

 

 

 

 

 

こちらのグラフは、横軸が揺れの回数、縦軸が建物の2階床部分の揺れ幅を示している。

特に7回目の実験体の揺れ幅は、「MIRAIEなし」に比べて「MIRAIEあり」が62%もの揺れを低減しているのがお分かりいただけるだろう。

一見「あまり変わらない」と感じていても、繰り返し余震が起きることで、建物全体のあらゆる箇所でダメージは蓄積されていく。目には見えなくても、揺れが来るたびに家は傷ついているのだ。

住友ゴムの担当者は、「これまで静的試験、動的試験、箱型モデル振動台実験、プログラム解析などで検証を進めていたMIRAIEの性能を、改めて今回の大規模な実大実験で実証することができた。今後はより性能を高めるために、少ない設置数で更に高い効果を生み出す構造や高減衰ゴムをさらに質の高いものにしていきたい」と話す。

現在の建築基準法で定められている耐震基準は1回目の本震に対するもので、余震を想定していない。

例えば、東日本大震災のように、何度も繰り返される余震が起きている中で、再度大きな地震が発生した場合、被害は想定以上になることが想像できる。どの家庭にも標準で取り入れることのできる製品改善が、さらになされることを願ってやまない。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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