「木造14階建て」が登場?――国内初、木造部材で「2時間耐火」合格

国内で初めて、木造構造部材が2時間耐火試験に合格し、「木構造耐火部材」の大臣認定を受けた。大規模木造建築の普及に取り組むシェルター(山形市)が開発した。これにより法的には「木造14階建て」が可能になり、日本の建築や林業の姿を大きく塗り替える可能性がある。(オルタナ副編集長=吉田広子)

シェルターが開発した木構造耐火部材「クールウッド」
シェルターが開発した木構造耐火部材「クールウッド」

同社が開発した木構造耐火部材「クールウッド」は、核となる集成材(木材)を石こうボードで囲み、外側をさらに集成材(または製材)で覆った特許製品だ。同社は2003年から開発に取り組み、2013年7月に建築基準法に基づく2時間の耐火試験に合格。2014年11月13日に国土交通省の大臣認定を受けた。

同社はすでに1時間耐火の木構造耐火部材を販売している。だが、1時間耐火の木造構造の場合、建築基準法で4階建てまでしか許可されない。「2時間耐火」の認定を受けたことで、従来の限界を遥かに超えて最大14階建ての「木造中層ビル」が可能となった。

■「林業再生」にも貢献

日本では林業が衰退しており、木材の有効活用が課題だ。しかし、大規模に木材を使用する大型ビルや大型施設では、2時間耐火に合格する木造構造部材がなかったため、木造の大型施設は極めて限られていた。

日本でも2010年10月施行の公共建築物木材利用促進法によって、公共建築物への木材の積極利用が定められたものの、実際にはさほど進んでいなかった。

シェルターはもともと、1974年創業の地域工務店だった。「本当の100年住宅」を掲げ、木造建築の拡大を目指し、耐火性能が高い木造構造部材の開発を進めてきた。2015年秋には、同社が1時間耐火の部材を提供し、国内最大の木造耐火ホール「南陽市新文化会館」(山形県南陽市)が誕生する予定だ。

同社取締役統括ディレクターの安達広幸さんは、「創業当初から『木造』だけに取り組んできた。『木造はここまでしかできない』という概念を変え、国産材の可能性を広げたかった。北海道から沖縄まで全国の木材が利用できて、だれでも使えるような商品開発を心掛けた」と話す。

今回の「2時間耐火」木造構造部材が全国に広まれば、中層ビルや大型公共施設の「木造化」が一気に進むことも考えられる。さらには、間伐材をふくむ各地の林産資源の利用が進み、林業の活性化にもつながる。安達取締役は「3時間耐火もすでに視野に入っている」と言い、「3時間耐火」が実現すれば、階数の制限もなくなる。

同社営業本部の土田音さんも「当社は全国的に事業を展開している。山形だけでなく、全国各地で、その土地の木材を使い、地産地消をうながしていきたい」と語る。

同社にはすでに県内外から多くの問い合わせがきている。「銀座や日本橋など、日本の中心地に木造ビルが建つ姿を見てみたい」(安達取締役)と夢は広がる。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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