日本のマスコミが報じない欧州での原発事故[村田 光平]

村田 光平

欧州で、重大な原発事故が相次いでいます。11月28日にウクライナのザポロジェ原発で事故が発生(注1)、続けて11月30日にはベルギーのティアンジュ原発では火災により原子炉一基が運転を停止しました。(元駐スイス大使=村田光平)

ベルギーの原発事故に関する12月1日付けAFP電(注2)によれば、同国では8月にも別の原発で原子炉が停止しているが、この原因についてはなんと「人為的な破壊行為」があったためとされているのです。

電力の約55%を原子力発電に依存しているベルギーの原発7基のうち4基が運転停止しているとのことです。事態は極めて深刻であり、国際社会は背景を早急に究明するべきものと思われます。

世界の30カ国余に存在する430基以上の原発は現在、いずれも燃料棒冷却プールへの水と電気の供給が断たれれば過酷事故が発生する可能性があります。

私は3・11事故以前から原発の存在は日本の安全保障問題であることを指摘してまいりましたが、世界の安全保障問題でもあることが示されました。由々しきことは日本のマスコミは今回の事故を一切報じていないことです。

他方、IPPNW(核戦争防止国際医師会議、1985年ノーベル平和賞受賞)スイス支部は、福島第一の汚染水問題の深刻な現状を憂慮し、9月16日付「ワシントン・ポスト紙」への私の書簡(注3)などを独訳しスイスのマスコミに配布することを決めるなど、事故処理の現状からして東京五輪開催の再考をIOCに求める方向の動きを始めております。

収束からほど遠い福島事故を抱えながらの東京五輪開催については国内からも返上すべしとの声が高まりつつあり、これ以上放置すれば関係者のモラルを問う方向に向かうものと思われます。ご賢察の通り東京五輪は一日に6000人以上の作業員を確保する必要のある福島原発事故処理と表裏の関係にあります。最近の地震、火山噴火の動きの活発化は大きな不安要因となりました。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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