NPO「人と人をつなぐ会」の竹原のぞみ理事長は「新宿区では1人の民生委員で500世帯を受け持つが、全て見守るのは難しい。何とか見守りの仕組みにITを組み込みたい」と訴えた。会では孤独死した人の葬儀費用等を支援する目的で、少額短期保険を販売している。
「隣人祭り」日本支部代表のスティーブ・ジャービス氏は「近所同士がゆるくつながるためのきっかけが必要」と話す。「隣人祭り」はフランスでの孤独死をきっかけに誕生したローカルイベントで、近所で集まりお茶や食事をしながら交流。日本でも2008年以降、200回ほど開かれているという。
■経済至上は人間の尊厳と相反
本作品製作のために、監督は実際に民生係に同行。実在の人物や出来事について綿密に取材を重ね、主人公のモデルを作り上げた。行政が孤独死の葬儀を担う光景は、決して幸福には見えない。しかし、そこには個人の自由を保障するために社会でコストを負担する、という合意がある。
孤独死した人の生涯に敬意を払おうとする主人公。一方、彼をリストラした上司は「孤独死した者に葬儀など不要」と突き放す。人間の尊厳と、経済や効率を至上とする現代社会との相反が、この場面に凝縮されている。
孤独死のリスクを減らすには、人はつながるしかない。しかし地縁のような「しがらみ」に回帰するのは非現実的だ。とすれば、可能な最善の選択はどこか。本作品は問いかける。1月24日からシネスイッチ銀座ほか全国で上映。