「自分の足で移動したい」。そんな基本的なニーズも、病気やケガによる障害で満たされなくなることがある。仙台市のベンチャー企業が開発した「足こぎ車いす」は、歩行が困難な人でもペダルを漕ぐことで、楽に移動できるようにするのが目的。同社担当者は「下肢に少しでも感覚が残っていれば、漕げる可能性がある」と話す。(オルタナ編集委員=斉藤円華)
足こぎ車いす「プロファンド」は、東北大学発のベンチャー企業、TESS(鈴木堅之代表)が2011年に発表。下肢が不自由な人を対象とした、リハビリ器具の研究を基礎に開発された。
人は特に頭で意識せずとも歩くことができる。自動的で、しかもリズミカルな歩行を可能とするのは、脊髄にある「中枢パターン発生器(CPG)」の働きが重要、との説がある。
この考え方を踏まえたのがプロファンドだ。「CPGがもっとも活発に機能するよう、(ペダルを回転させる)クランクの位置を設けている。下肢まひの人も、足に少しでも感覚が残っていれば、漕げる可能性がある」と、TESSの村岡利彦営業本部長は説明する。
■健常者でも楽しい
足こぎ車いすは24日と25日、東京の科学技術館で開かれた「ハンドメイドバイシクル展」(自転車文化センター主催)で展示された。
出展は4年連続。記者も試乗したが、軽いぺダリングですいすいと漕げる。しかもレバー操作で、左右への操向や360度ターンも思いのままだ。転倒防止など安全性にも配慮。「健常者にも好評です。健常者が楽しければ、障がい者や高齢者はもっと楽しいはず」と村岡氏は話す。
NHKの経済バラエティ番組「さきドリ」でも12年春、「驚きの足こぎ車いす」などと紹介。番組内ではリハビリ効果が科学的に検証された。他のメディアにも注目され、これまでに6千台が売れている。
「かなり知られるようになったが、それでもまだ10人に1人という感じ」と村岡氏。必要とする人に届けるため、さらなる知名度アップが課題だ。足こぎ車いす「プロファンド」の価格は約31万円から。