私たちに身近な生物多様性(6)桜の開花宣言に思う[坂本 優]

桜の枝にとまるメジロ。今年3月中旬、板橋区内で
桜の枝にとまるメジロ。今年3月中旬、板橋区内で

IUCN(国際自然保護連合)が定義する「絶滅のおそれのある野生生物のリスト」には、2014年11月時点で約2万2千種が登録されている。生物多様性の確保は喫緊の事項だ。本コラムでは、味の素バードサンクチュアリ設立にも関わった、現カルピス 人事・総務部の坂本優氏が、身近な動物を切り口に生物多様性、広くは動物と人との関わりについて語る。(カルピス株式会社 人事・総務部=坂本 優)

気象庁は3月23日、靖国神社の標準木に基づき、東京の桜(ソメイヨシノ)の開花を宣言した。昨年より2日、平年より3日早いとのこと。満開は31日頃と予想されている。

気象庁による1953年以来の桜開花の記録からは、年によってばらつきはあるものの、過去半世紀の間に、関東以北では概ね1週間前後、開花が早まっているのではないかとの解析もある。早期化は全体として見たときには地球温暖化によるものと推定されている。

写真は、桜の花の蜜を求めてやってきたメジロを撮影したものだ。普段、何気なく目にする春の風景だが、桜も他の生物の命の糧になっているという、今更言うまでもない生物多様性と桜との関わりの一端を示している。

桜などの開花が早まるということは、それらの花や実、葉につく昆虫などを餌とする野鳥にとっては、決して小さな問題ではない。多くの野生生物は、餌が豊富になるタイミングに合わせて子育てをする。開花や満開、結実の時期がずれることは雛や子の生育にも影響する。餌が豊富な時期に繁殖のために渡ってくる渡り鳥にとっては、その時期に餌がないということは、種の存続をも左右しかねない一大事だ。

開花より影響が大きいと思われる満開の時期については、1981年以降の記録が気象庁のホームページに掲載されている。東京のデータを見ると、20世紀の期間中、満開が4月となったのは、20年のうち16年と8割を占めるが、21世紀に入ってからは、14年のうち6年で5割以下となる。

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坂本 優(生きものコラムニスト/環境NGO代表)

1953年生。東京大学卒業後、味の素株式会社入社。法務・総務業務を中心に担当。カルピス株式会社(現アサヒ飲料株式会社)出向、転籍を経て、同社のアサヒグループ入り以降、同グループ各社で、法務・コンプライアンス業務等を担当。2018年12月65歳をもって退職。大学時代「動物の科学研究会」に参加。味の素在籍時、現「味の素バードサンクチュアリ」を開設する等、生きものを通した環境問題にも通じる。(2011年以降、バルディーズ研究会議長。趣味ラグビー シニアラグビーチーム「不惑倶楽部」の黄色パンツ (数え歳70代チーム)にて現役続行中)

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