東京チェンソーズ代表の青木亮輔さんは、「そもそも、このプロジェクトを始めようとしたきっかけは、『都民が東京の森に期待すること』というアンケート調査の結果を見たことでした。自然体験や生物多様性に期待するとの答えが圧倒的に多く、木材と答えた人は3%ほどだったそうです」と、東京美林倶楽部を立ち上げるに至った思いを話す。
同社は、「自然生態系への影響を最小限に抑える丁寧な山造りを行うことで、きれいな水と空気を再生し持続可能な森林づくりを行い、東京に暮らす人たちに良質な木材を供給していくこと」を社の理念としている。「それまで、東京の木で家をつくろうというイベントに参加したり、情報を発信したりしてきました。しかし、入り口を間違えているのではないかと思いました」(青木さん)
都民の関心は、木材よりも自然体験や生物多様性にある。一方で、森づくりや自然環境に何かのカタチで自分も貢献したいと考える人も少なくない。ならば、その人たちの思いを汲み、いちばん手間のかかる植林後30年間の森づくりにかかる費用を負担してもらい、その代わりに将来出てくる間伐材を差し上げるという企画を考えた。3本5万円ということは、もし1ha分を育てるだけの会員が集まれば5000万円になる。30年間の育林の費用としても尺が合うと考えた。
青木さんが構想しているのは、5万円の費用で30年間森を育てるだけではない。その30年間、会員たちと東京チェンソーズ・檜原村は密接な関係を持つことができる。メインの下草刈りなどのイベント時に開催するオプションイベントの際に、檜原産の物品も販売できる。設計事務所との提携も考えているそうだ。