[書評:議会は踊る、されど進む]地方自治再生のヒントとなる「失敗事例」

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統一地方選挙が終わった。市民にとって地方自治は、国政以上に生活に関わる身近なものであるはずだ。ところが今回、投票率が軒並み過去最低を記録したように、身近さに見合った関心を持たれていないのが実情と言える。『議会は踊る、されど進む 民主主義の崩壊と再生』(谷隆一著、ころから刊、税込1680円)は、民主党ブームに乗る形で誕生した革新市政の挫折から、地方自治が抱える課題と打開の道筋を探る一冊だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)

■革新市長、就任早々に公約破棄

『議会は踊る、されど進む』(谷隆一著、ころから刊)

『議会は踊る、されど進む』(谷隆一著、ころから刊)

東京・東久留米市は人口11万6千。多摩の一角を占め、今も武蔵野の雑木林や畑が残るこの地は高度経済成長期、都心のベッドタウンとして人口が急増する。ところがバブル崩壊と少子高齢化による現役世代の減少で市税収入が頭打ちとなり、さらに小泉政権時代の「三位一体の改革」で国から地方への財政支援が大幅にカット。同市の財政は危機的状況を迎えた。

こうした中、大きな法人市民税収入が見込める大型商業施設の誘致計画が浮上する。本来、大規模商業施設が建設できない用途地域での計画だったこともあり、住環境の悪化を危惧する住民、そして商店主らが中心となって大規模な反対運動に発展。09年の市長選挙では民主党への政権交代も追い風となり、「誘致見直し」を公約に掲げる革新候補が当選を果たした。

ところが市長は当選から間もなく公約を破棄し、誘致容認に転じる。選挙中にも誘致手続きが進んでいたことに加えて、誘致撤回を裏付ける財政的余裕もなかったためだが、市長を応援した市民や与党の間には失望が広がった。

その後の市政でも市長と市民との溝は深まり、さらには少数与党さえ敵に回す形で市議会とも対立。2012年度の予算案は議会で4度否決された挙句、市長が専決処分に踏み切った。ところが奇妙なことに、市長はリコールや不信任決議に遭うこともなく4年の任期を務め上げた。

■「住民はいるが市民がいない」

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2015年4月27日(月)17:56

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