日本の有機農業の未来を考えるシンポジウム

「日本の有機農業は欧米に15年遅れている」。社会人向け週末農業学校「アグリイノベーション大学校」が9日、「有機農業の今とこれから」を題材に都内でシンポジウムを開催。有機農業に携わる識者たちは、就農希望者や関心の高い層に向けて、日本の有機農業の課題と希望を示した。(辻陽一郎)

有機農業に関わる4名のパネリスト。
有機農業に関わる4名のパネリスト。

シンポジウムは、サンタフェ ナチュラルタバコ ジャパン株式会社がCSRプロジェクト「SHARE THE LOVE for JAPAN」の一環として実施した。有機農業をはじめとする、大地に優しい農業を応援する取り組みだ。

米国本社のサンタフェ ナチュラルタバコ社は、有機農業で作る文化のなかったタバコ産業に持続可能な手法を取り入れ、ナチュラルなタバコというカテゴリを作り上げた。

現在では米国で6番目のブランドとなるほどの成功へ導いたマイク・リトル社長は「無添加かつ高品質なタバコを作るために、農家との信頼関係の構築に情熱をもって取り組んでいる」と話す。生産者がただタバコを作るのではなく、なぜ有機なのかといった知識の提供を大切にしている。米国では1989年に2haだったオーガニックタバコ農場は、2015年には8000haまで拡大した。

一般社団法人フードトラストプロジェクトの徳江倫明代表は、日本がEUに15年遅れて有機農業に関する法律ができたことをあげ、「EUでのオーガニックマーケットの現状が、15年先の日本の未来」と日本の有機農業の課題を浮き彫りにした。日本で有機農業が広がっていくには、生産者・消費者の双方へのアプローチが必要となる。

有機のがっこう土佐自然塾の山下一穂塾長は、有機農業を学ぶ塾で人材育成を行う。「有機農業に携わろうという動機は何でも良い。有機農業はきついが身体がつらくても、心が休まる」と話す。また、有機農家の問題点として「オーガニックが広がらないのは、作り手に特別だという意識が強いから。これが消費者にはバリアになってしまう」とも話した。

大地を守る会や、らでぃっしゅぼーや‎を手がけるなど消費者へのアプローチを続けてきた徳江代表は「オーガニックマーケットはずっと伸びてきているし、これからも伸びていく。消費者ニーズを信じて伝えていくことが大切」と日本の農業の未来への可能性を提示した。有機農業生産者・くにさき農未来(フューチャー)の村田光貴代表は「顔の見えるお客さんにだけ販売することで、有機の良さをきちんと伝えることができる」と言う。

最後にマイク・リトル社長は、「私たちは世界に責任がある。それを果たすためにオーガニックを知り、選ぶというチャンスがある」と未来へのメッセージを伝えた。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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