途上国と消費者の課題を同時に解決――エシカルを前面に出さないマーケティング(2)[田口 一成]

まず一つ目は、マーケットサイズです。「エシカル」を前面に押し出すことで、確かにメディアにも取り上げもらえるかも知れませんし、ある特定のファンを獲得しやすくはなるでしょう。ただし、それでも「エシカルなものを買う」というエシカルマーケットはまだ小さいという現実から目をそらしてはいけません。「一人でも多くの貧しい人に仕事を創る」というのが事業の目的であればなおさらです。

2年で300名を超えたバングラデシュ自社工場の仲間たち
2年で300名を超えたバングラデシュ自社工場の仲間たち

そしてもう1つの理由は、僕がバングラデシュで働く工場の人であれば、「かわいそうだから買ってくれた」というのは嫌だから。「君たちの国の貧困をどうにかしたいから、一緒にがんばろう」と言われるのと「一緒に日本の消費者に人気の商品を生み出していこう」と言われるのではどちらがやる気を生み出すでしょうか?僕らがやりたいことは、「援助」ではなく「ともに自立の道を見つけて行くこと」なのです。

この事業のストーリーは、僕らが2011年にバングラデシュに現地視察に行ったことからはじまります。その後、貧しい農村部の女性たちに現金収入をもたらすために養蜂事業を試みたり、ココナッツオイルの事業化したりするなど様々な試行錯誤の末に見つけたのが「牛革」でした。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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