大成建設、国内初「年間エネ収支ゼロ」のオフィスビル

大成建設は、技術センター(横浜市)に建設した「ZEB実証棟」(ZEB:ゼロ・エネルギー・ビル)で、2014年6月から1年間運用し実証を行った結果、エネルギー消費量が463MJ/m2・年、創エネルギー量が493MJ/m2・年となり、「都市型ZEB」を目指した建物として、国内で初めて建物単体で「年間エネルギー収支ゼロ」を達成した。(オルタナ編集委員=高馬卓史)

■「超省エネ技術」と「創エネ技術」を融合

ZEBの実証棟
ZEB実証棟

「都市型ZEB」の実現に向けた今回の実証では、オフィスビルが集中する都市部に建設する建設物を、利用者の快適性を損なわずにZEB化することを目指している。

そこで建物のエネルギー消費量の75%を削減する「超省エネ技術」と、残りのエネルギー消費量25%を賄う太陽光発電による「創エネ技術」を1年間にわたり運用・実証し、年間エネルギー収支ゼロを達成することで、これまで困難とされていた都市型のオフィスに対してもZEB化が可能なことを立証した。

具体的には、有機薄膜太陽電池の特長を生かして、実証棟全体の外壁に有機薄膜太陽電池を設置した。有機薄膜は色の選択・変更が可能であり、ロールツーロール方式で、形・寸法の自由度が向上、軽量で施工性が向上し、建材一体化が可能という利点がある。

■自然光を最大限生かした「採光システム」

自然光を生かした採光システム
自然光を生かした採光システム

さらに、採光システムと超高効率LED間接照明の連携で室内の明るさ感を確保し、人検知センサーで人の在/不在を判断し、高効率に下向きLED照明を制御している。

採光システムでは、自然光を天井面に照射し、眩しさ感を抑制しつつ、室内の明るさ感を向上させ、窓際だけではなく室奥にまで光を到達させ、照明エネルギーを最小化している。

さらには、風・外気温・室温・人の位置などの計測データを用いた窓の開閉判断や屋外の風を取り込んで、室内を快適な温熱環境に制御するシステムも構築している。

今後、大成建設では、ZEB化を実現する「超省エネ技術」と「創エネ技術」のさらなる高機能化やコスト削減を進めるとともに、2020年には「市場性のあるZEBの実現」を、2030年までに「ZEBの普及拡大」を目標として、都市部を含め全国で計画されているZEB化を目指した新築・既存の建物への提案活動を積極的に推進するという。

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高馬 卓史

1964年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。総合情報誌『選択』編集長を経て、独立。現在は、CSR、ソーシャルビジネス、コミュニティ・デザインなどをフォロー中。執筆記事一覧

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