南三陸の漁師が語るサステナブルなカキ養殖の効果

「環境の日」の6月5日から、「サステナブル・シーフード・ウィーク」が始まった。初日は、主催者が東北から漁業者らを招き、フェスティバルを開催。会場のCOMMUNE246(東京・港)にある飲食店「FISH COOPスタンド」では、最終日の11日まで、認証魚を使ったメニューを販売する。(編集委員=瀬戸内千代)

左から松永氏、後藤氏、司会のnico氏
左から松永氏、後藤氏、司会のnico氏

持続可能な水産物を広める同キャンペーンでは、天然魚向けのMSC、養殖魚向けのASCという2つの国際認証制度の普及を図る。日本では2014年からMSC日本事務所とWWFジャパンが主催。今年は28の企業・団体が参加・協力した。

フェスティバルのトークショーでは、宮城県漁業協同組合志津川支所戸倉出張所の後藤清広・戸倉カキ生産部会長と、カツオとビンナガマグロの一本釣り漁業でMSC認証の取得を目指している明豊漁業(宮城県塩竈市)の松永賢治代表取締役社長が登壇した。

南三陸町戸倉のカキ養殖いかだは、震災前は過密状態だった。津波被害からの復興にあたり、いかだの数を削減。10時間以上だった労働時間を8時間に短縮した。そして今年3月に、環境面に加えて労働者の人権面にも配慮が求められるASC認証の日本初取得を果たした。

後藤氏は、「女房とたまには映画も見られるようになった。3年かかって大きくしていたカキが1年で出荷できるようになり、単価も上がった。ASCが励みになって、後継者も増えた」と、取得後の変化を挙げた。

水産加工業を営む松永氏は、震災後の原料不足をきっかけに漁業にも進出。MSCの理念に賛同して1年半前に審査を受けた。取得できたら、自社で加工して販売するという。

「単独でやっても意味がない」と語る松永氏は、認証マーク付きの魚を選ぶよう、消費者に呼び掛けた。しかし、認証品を販売する店舗はまだ少ない。水産資源の枯渇を防ぐには、持続可能な漁業・養殖業に取り組む生産者の増加と、それを積極的に応援する社会が求められている。

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瀬戸内 千代

オルタナ編集委員、海洋ジャーナリスト。雑誌オルタナ連載「漁業トピックス」を担当。学生時代に海洋動物生態学を専攻し、出版社勤務を経て2007年からフリーランスの編集ライターとして独立。編集協力に東京都市大学環境学部編『BLUE EARTH COLLEGE-ようこそ、地球経済大学へ。』、化学同人社『「森の演出家」がつなぐ森と人』など。

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