ESGリスクに対応した日本企業のガバナンス体制の整備

蔵元 左近
オリック東京法律事務所・外国法共同事業 弁護士
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他方、日本企業がESGリスクに対して的確に対処することは、自社のレピュテーションの向上、CSV、BOPビジネスを含む新規ビジネス機会の獲得、機関投資家及び金融機関からの投融資の増加、ソーシャルボンド(グリーンボンドを含む)の発行等、経済上・レピュテーション上の利益拡大、いわゆる攻めのガバナンスの実現に繋がる。

そこで、日本企業としては、「攻め」と「守り」のガバナンスの実現のため、経営上のリスクマネジメントの重要な課題として、競争法(独禁法)対応、腐敗防止対応等の延長として、ESGリスクに対応した、自社(グループ)のガバナンス体制の更なる整備が必要となると考えられる。

ガバナンス体制の具体的内容としては様々なものが考えられるが、個々の企業(グループ)に応じてメリハリを付けたものにすべきである。実際には弁護士等のアドバイザーと一緒に作りこむことになろう。例えば、下記のような整備が必要と考える。

1. 責任者の選定・責任部門の設置(例:ESG・CSR戦略委員会等のCEO直属の機関の設置)
2.グローバルポリシー・行動規範等の設定又は改定
3.リスクアセスメント、デューディリジェンス等の実施
4.サプライヤー等との間の契約の改定(例:グローバル・コンプライアンス・CSR・ESG条項)
5.従業員、サプライヤー等に対するトレーニング及びキャパシティー・ビルディングの実施
6.従業員、労働組合、国際NGOとの対話を含めた協働の実施
7.内部監査部門の強化・独立性の確保、監査等委員会や監査役(会)、独立社外取締役との関係の緊密化
8.コンプライアンス通報制度や苦情処理メカニズムの構築、強化等の措置を適切に取捨選択し、PDCAサイクルで回していくこと
 
以上のようなガバナンス体制の整備は、ESGリスクの回避・予防と共に、不祥事発生時の被害拡大の抑止をも可能とする。

これは、日本企業が、各国当局・市民・NGOに対し、自社の落ち度(過失)がなかったことを主張・説明する際の証拠(対抗策)にもなり得る。リスクマネジメントの観点から重要といえよう。

本稿は、一般的な観点で情報を提供するものであり、その正確性を保証するものではなく、また、特定の案件に関して法的アドバイス等を提供するものでもない。個別の案件についてはその具体的状況に応じ、弁護士等の専門家の適切な助言を求めて頂く必要がある。

なお、本稿に記載している見解はすべて執筆者の個人的見解であり、所属する組織等の見解ではないことにご留意頂きたい。

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蔵元 左近
オリック東京法律事務所・外国法共同事業 弁護士
弁護士(日本・ニューヨーク州)。オリック東京法律事務所勤務。国内・海外での不動産ファイナンス、M&A、紛争案件等の企業法務全般を取り扱う。近時は、日本企業のグローバル・コンプライアンス体制の強化、CSR関連法務にも注力しており、英国現代奴隷法対応や、ソーシャルボンドを含む社会的投資のサポートも行っている。

2017年2月3日(金)19:09

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