オーガニック100%の給食、千葉の認定こども園で

和食中心のオーガニック給食を楽しむ子どもたち

千葉県佐倉市にある認定こども園「吉見光の子モンテッソーリ子どもの家」は2015年4月から、オーガニック100%の給食を提供している。使われている農産物のうち、約6-8割が地元産だ。新規就農者の販路になるなど、同園が中心となり、オーガニックを地域に広げている。10月からは電力を自然エネルギーに切り替えた。(オルタナ副編集長=吉田広子)

小松菜のおひたしにニンジンサラダ、キュウリの酢のもの――。これらは園児からのリクエストメニューだ。以前の人気メニューといえば、カレーにから揚げ、ハンバーグ。ところが、2015年4月にオーガニック給食に切り替え、和食中心のメニューにしたところ、子どもたちは旬の野菜が大好きになった。

同園の栄養士・寺田園子さんは「子どもは敏感なので、食材のおいしさが分かる。切り替えた当初は、和食に慣れず残菜が目立ったが、数カ月経つと切り替え前よりも残菜が少なくなった」と、嬉しそうに語る。

七夕給食(三色丼、味噌汁、わかめと胡瓜の酢の物、七夕ゼリー)。三食丼は天の川に見立てて、そぼろ、たまご、青菜で飾った

■子どもたちに「本物」を

田んぼに囲まれ、竹の外装が美しい「吉見光の子モンテッソーリ子どもの家」。同園は2013年4月に開園し、「子どもは、自らを成長・発達させる力をもって生まれてくる」という考えのもと、子どもの自発性を重んじるモンテッソーリ教育を実践している。国際資格を持つモンテッソーリ教師が3人在籍し、0―4歳児が63人、幼稚園児が25人通園している。

長島成幸園長は「モンテッソーリ教育では、『本物』に触れさせることを重視している。食器にしろ、調理器具にしろ、子ども用のおもちゃではなくすべて本物を使う。『本物』のオーガニック食材を取り入れ、食育に取り組むことは自然な流れだった」と経緯を語る。

「吉見光の子」は開園当初、給食業者から給食を調達していたが、ある園児がいつも弁当を持参していた。その理由を保護者に尋ねたところ、農産物の放射能汚染と農薬の影響を懸念し、汚染度が低く農薬不使用のオーガニック食材を取り寄せているという。

そこで、「子どもたちにできるだけ良いものを食べさせたいという思いで、食材探しを始めた。給食を見直したことで、子どもの命を守ることの重要性を再認識した」(長島園長)。

栄養士や調理師だけではなく、全職員がオーガニックや食の安全、農業、調理法に関する研修を受けた。オーガニックに転換したことで、皮や葉まで丸ごと使うなど、食材の活かし方も変わってきたという。

さらに、園児の保護者が新規就農者だったこともあり、地域の有機農産物の活用にも乗り出した。もともとは、関西の企業から食材を仕入れていたが、形が不揃いで流通に乗せるのが難しいB級の農産物などを地域の農家から調達するようになった。農家にとっては新たな収入になり、園にとってはコスト面でメリットがある。現在は、多いときで8割の農産物が地元産だ。

近隣の畑では、園児が野菜の栽培や収穫を楽しんでいる

近隣にある約500平方メートルの畑では、園児が自分たちで野菜を育てている。トマトやキュウリ、トウモロコシ、枝豆、ジャガイモ、サツマイモなど、旬の野菜が一面に並ぶ。育てた野菜を自分で収穫することで、嫌いだった野菜も好きになるという。

パリ市は2020年までに学校給食の50%をオーガニックにすることを目指している。世界的に給食のオーガニック化が進んでいるが、日本でも徐々に広がっている。

国際環境NGOグリーンピース・ジャパンの「ハッピーランチガイド」(2015年)によると、アンケート調査に参加した1037件の私立幼稚園のうち、「給食に無農薬食材をほぼ全て導入している幼稚園」は125件、「将来的に無農薬食材を使用したい幼稚園」は739件に上った。

■自然エネルギーに転換し、より持続可能に

モンテッソーリの教具「色付き円柱」。漸次的な違いがあり、集中力や観察力を養うとともに、指先の洗練や数への導入につながる

「吉見光の子」は、よりサステナブル(持続可能性)な事業運営を目指し、2017年10月中旬から、電力を自然エネルギーに切り替えた。

契約先のみんな電力(東京・世田谷)は、自然エネルギーを優先的に電力調達し、顔の見える野菜のように、電力の生産者と消費者が直接つながる「顔の見える電力」の供給を推進している。みんな電力は自然エネルギー100%を目指す企業、自治体、団体などの法人向けサービスの提供を開始し、電気を通じた地域活性や復興支援にも取り組む。

長島園長は「モンテッソーリ教育は平和教育ともいえる。東日本大震災後の原発事故を受け、母なる大地を大切にしなければいけないという思いを新たにした」ときっかけを語る。

「こども園は、子どもたちが人として育っていく場所。次の世代に何を残していくか。食もエネルギーも何を選択するかが問われている」。「人生挑戦」を信念に掲げる長島園長は力強く語った。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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