若者の心つかめぬ企業に未来はない:原田曜平氏

■若者の過剰評価は禁物

――今の若者たちはシェアリングエコノミーにも興味があると言われていますが、この動きをどう見ていますか。

原田:シェアリングエコノミーに関しては懐疑的に見ています。大人が若者を理想視し過ぎていると思います。ミレニアル世代という言葉の普及の背景には、大人たちが理想視したことがあるのではないでしょうか。

なぜなら、ミレニアル世代は、ただ貧乏になっているだけという説もあります。車は欲しいけれど、高くて買えない。その結果、カーシェアリングが流行りました。つまりお金がないだけなのです。

あまり過剰に、シェアする行動を美化するのは良くないです。もちろんミレニアル世代は新しい可能性を秘めていると思いますが、若者たちが意図してそれを選択してはいません。大人が一方的に美談にしている傾向が強いということを認識してほしいです。

――米国のミレニアル世代の特徴として、社会問題への意識が高いと言われていますが、この見方については、どうお考えでしょうか。

原田:私は必ずしもミレニアル世代が社会問題への意識が高いとは思っていません。社会問題に関心が高い都市部に住む高学歴の若者はいますが、全体としては少ないと思っています。

日本は過剰にそうした見方を信じていますが、実際に米国の若者にインタビュー調査を行うと、本当はNGO/NPOよりグーグルやアップルに就職したかったという声をよく聞きます。

もちろん、一部にはNPOで働きたいと思っている人もいますが、多くの若者は経済的にそれどころではないのが現状です。

――日本では、東日本大震災を契機に、社会問題への意識を持つ若者が少しずつ増えたのではないでしょうか。

原田:少しずつ増えているのは事実だと思います。ですが、東日本大震災で若者の価値観が変わったというのは、大人が思い込みたい理想で、残念ながらぼくはそう思わないです。ただ、これは世界全体の若者に言えることですが、「優しい子たち」が増えてきたとは思います。

経済的に余裕はないのですが、いろいろな人たちの声をSNSで読むことができるので、自分だけ豊かになれば良いと考えたり、人を蹴落としてでも出世したいと考えたりする若者は少なくなってきています。

それ自体は悪いことではないですが、視野が狭くなってきていると感じます。米国のマンハッタンの富裕層の若者にインタビューをすると、少し前までは高級レストランでパーティーをしたという話を聞いていましたが、リーマンショック後は、人があまりいない場所で喫茶店を見つけたなど、日本の若者のように、身近な範囲で喜びを感じるようになっています。
スティーブ・ジョブスのように大儲けてしてやろうみたいなタイプは明らかに減っています。

悪く言えば、近視眼で粒が小さいと言えますが、現実的で地に足が着いているとも言えます。先ほどの社会問題への意識についても同じですが、過剰に今の時点でのミレニアル世代を評価することは良くないですが、ポテンシャルはすごく高いとは思います。

しかし、そのようなエシカルなマインドを持った層はマジョリティーにはならないでしょう。経済的にゆとりのある人ではないと社会貢献は続けられないからです。日々の生活で手いっぱいという人がこれからどんどん増えていくでしょう。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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