書評『企業家に学ぶESG経営』(長谷川直哉編著)

30年以上前の講義も本書も、現在を起点にタイムラインは過去へと向かって延びる。彼らの足跡を、今の私たちの価値観や興味・関心から、あえて(良い意味での)色眼鏡をかけて過去からたどり、成果や失敗、そしてその意義を炙り出す。

それが「史」。なるほど、サブタイトルは「不連続な社会を生き抜く」、「経営構想力」。これが今の私たちの根っこにある価値観、関心だ。バブル絶頂期、日本経済の繁栄を謳歌していた1980年代後半の日本経済のサクセスストーリーの源流をたどり、その要因を探った当時の関心とは明らかに違う。

今でもこれらの時代に遡るのは、この3つの不連続な波(時期)のどの波をとっても、今私たちが遭遇しているものと似たような波長を感じるからであろう。これまでの考え方や、やり方は通用しない局面なのだ。そこに立っている今の私たちの関心は、もっぱらSDGs(持続可能な開発目標)で、これを企業が投資を意識したコトバで置き換えたのが、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営。ところが、現実には問題解決に向けて八方塞がりのものが多いのではないか。この状況が遥か昔と「似たような波長」なのだろう。

しかし、なぜ結局この3つの時期に遡っていくのか。似たような波長、日本における資本主義の勃興の揺るぎない源流。そして、もうひとつ。SDGsの特徴と重なる、異彩を放つバックキャスティングの思考がそこにあったからだろう(実はこれが真の凄さで、今と違ってそんな概念は無く、洗練された経営やマーケティング手法も、当時の日本ではもちろん恵まれていなかったはずだから)。

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2020年4月1日(水)16:12

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