ユニリーバ前CEOのポール・ポールマン「IMAGINE」共同創立者兼会長が5月10日、「日経SDGs/ESG会議 グリーンエコノミーで描く成長軌道」に登壇し、「ESG時代の到来」と題した講演を行った。同氏は「新型コロナウィルス感染拡大の影響でSDGs(持続可能な開発目標)の達成が後退している」との危機感を示した。(オルタナ副編集長=吉田広子)

「日経SDGs/ESG会議」に登壇したポール・ポールマン前ユニリーバCEO(画像はオンライン中継のキャプチャ)

ポールマン会長は、ユニリーバの「売り上げ規模を2倍、環境負荷を半減させる」を軸にしたサステナビリティ戦略を率いてきた。2018年12月にユニリーバCEOを退任後、貧困や不平等を根絶し、気候変動対策を推し進めるため、企業を支援する財団「IMAGINE」を設立した。

「世界の平均気温はこのままでは3度以上上昇し、依然としてジェンダーなどの不平等があり、コロナが感染拡大する以前から、機能不全に陥っていた。これまでの経済モデルは持続的(サステナブル)ではなく、過剰な消費が行われている。これは将来世代から資源を盗んでいるといえる」と警鐘を鳴らす。

「過去50年で、生物の個体数は平均68%減少したという衝撃的なデータがあり、6度目の大絶滅ともいわれている。熱帯雨林は半減し、早ければ2027年には温暖化の閾値1.5度を超える可能性もある。この世界を機能させるためには、2050年までに温暖化ガスの排出量をネットゼロ(実質ゼロ)にしなければならない。自然は、私たちに年間125兆円規模もの恩恵を与えてくれていることを忘れてはならない。私たちは自然に依存しており、保護する責任がある」(ポールマン会長)

コロナで貧富の差が拡大、SDGsをビジネスチャンスに

環境問題だけではなく、社会の不平等の問題にも言及した。

「世界では、あまりにも多くの人々が取り残されている。43億人が1日5ドル以下で生活し、16億人の脆弱な労働者がいる。8億人が飢えに苦しみ、1億2000万人が極度の貧困に陥っている。パンデミック以来、労働者は3.7兆ドルの収入を失った。一方で、富裕層は、3.9兆ドルを稼いだ。これは、地球上のすべての人にワクチンを行き渡らせるのに十分な額だ」(ポールマン会長)

さらに同氏は「コロナの感染拡大は、SDGsの達成を20~30年、後退させた。社会的な不安は高まり、気候変動の影響も悪化している」と指摘する。

SDGs(持続可能な開発目標)は2015年9月、国連で採択された国際目標だ。「誰も取り残さない」というスローガンのもと、2030年までに貧困や飢餓、教育や雇用、水と衛生、エネルギーや気候変動、生態系保全などに関連する17の目標と169のターゲットが設定されている。

「SDGsをビジネスモデルに組み込むことで、最大のビジネスチャンスが生まれる。これまでサステナビリティに取り組むことはコストだと思われてきたが、『何もしないコスト』の方が高くつく。コロナからの経済復興のなかに、人や地球を含めること、つまり経済とサステナビリティの両立が重要だ」(ポールマン会長)

さらに同氏は「コロナによって、従来のシステムは持続的ではないことに気付き、政府や投資家が目を覚ました。自分たちの失敗が見えてきた。『健康な人々』は『不健康な地球環境』では育たない。リスクマネジメントに重きを置いた従来のCSR(企業の社会的責任)から、本物の社会的責任を追う企業『RSC』に移行しなければならない。地球のため、公益のために、ビジネスモデルをポジティブに変換させなければ、企業は生き残れない」と強調した。

ユニリーバ時代を振り返り、「12年前に金融危機が起こり、ビジネスモデルの変革が必要になった」と話す。その一環で、株主目線ではなく、長期的で、多種多様なステークホルダー(利害関係者)の視点を取り入れた、マルチステークホルダーの観点で事業を見直したという。

「パーパス(存在意義)を中心に据え、社会的な影響を最大化しようとした。例えば、衛生用品や女性の自己尊重を促す美容製品など、SDGsの課題解決に貢献するような製品・サービスを生み出すことに注力した。その結果、収益力あるブランドを構築し、競合を上回る成長を実現した」(ポールマン会長)

「企業には、意欲的なサステナビリティ目標とその説明責任がより一層求められている。消費者も、どう製品が生産されているのか、かつてないほどの透明性を求めている。目標と透明性がカギを握る。私たちの決意、リーダーシップが試されるとき。議論ではなく、行動が必要だ」と力を込めた。