※この記事は2022年3月31日に発売する雑誌オルタナ68号「戦争と平和と資本主義」の先出し記事です。オンライン有料会員に入会されると、本誌も無料でご自宅やオフィスに郵送します。

ロシアのウクライナ侵攻は、世界の民主主義と資本主義を大きく揺らがせた。グローバル企業の一部はロシア事業からの撤退をいち早く打ち出したが、ESGファンドには、ロシアや兵器産業への投資を続ける事例もある。ESGやSDGsの基本理念である「人と地球」を守れるかーー。投資する側も企業も、その存在意義を問われている。(オルタナ編集長・森 摂)

ロシア軍の爆撃を避けるため多くの人々が地下鉄に避難した(2月24日早朝、ウクライナのキエフで)©️ロイター/アフロ

「かつては─大体ナポレオン革命までは─将軍イコール指導者であり、戦争に勝てば、将軍個人の手柄となった。将軍が社会的名声という相応の『利益を得た』のである。(中略)いまはもうそのようなことはない。指導者も事務員の一人となりつつあり、代わりを探すのは必ずしも難しくない」 

(ヨーゼフ・シュンペーター『本主義、社会主義、民主主義』)

欧州の銀行がESG方針撤回

ロシアによるウクライナ侵攻から間もない2022年3月2日、スウェーデンの有力銀行であるスカンジナビア・エンスキルダ銀行(SEB)が、兵器メーカーや防衛産業への一部投資を再開したと米ウォールストリートジャーナルが報じた。

SEBは2021年2月、兵器産業への投資を禁じたESG投資方針を発表したばかりだった。わずか1年での方針転換に同社広報担当は「国際条約で禁じているクラスター爆弾など大量殺りく兵器への投資は引き続き見合わせる」「当社への出資者や預金者が、兵器産業への投資を望んでいないことは理解している」と言い訳した。

しかし、多くの金融機関が兵器産業をいまだ有望な投資先として見ていることは否定し難い。世界経済は2年もの間、新型コロナによる停滞を経験した。ウクライナ侵攻による航空や物流の停滞もあり、今後の株式市場の先行きは決して明るくない。

ところが、米レイセオンテクノロジー(軍用機エンジンも製造)、ロッキードマーティン、ノースロップなどの防衛産業株は、株価上昇が際立つ。ジェットエンジンを生産するサーブ(スウェーデン)は2月末からの5日間で株価が48%も上がった。

世界最大の機関投資家であるブラックロック社ですら、「レイセオンやエクソンモービルの株を持ち続けている」(ブルームバーグ報道)。ラリー・フィンクCEOがESG投資の重要性を強調しているにもかかわらずだ。

これに対して、米国や欧州の専門家やメディアからは、「ESG本来の趣旨が曲げられた」「投資を通じて戦争に加担している」との議論が巻き起こった。

ブルームバーグは「ロシアのウクライナ侵攻で岐路に立つESG」と題した記事(3月7日配信)で「『人と地球を守る』と喧伝したESG投資は、第二次世界大戦以来の欧州で最大となる紛争において、専制国(ロシア)に資金を投入している」と批判した。

ESG存在意義問われる