「他責にしない」トヨタ式問題解決とは

■「健康には社会とのつながりも必要」

カイケツに参加するNPO法人presents(東京・足立)代表理事の佐々木隆紘さんは、理学療法士として働くなかで、「医療だけでは解決できないことがあるのを実感した」と言う。

食事に関心を持つきっかけを作ろうと企画した「味噌作りワークショップ」

「『痛み』は社会的なものを反映すると言われているように、身体が健康になっても、社会的なつながりや役割がないと、人は元気にならない。健康でいるためには、肉体的、精神的、社会的な側面からアプローチが必要だ」(佐々木さん)

そこで、「人々の健康を地域で支えることはできないか」と考え、同じ思いを持つ療法士の仲間らと2017年にpresentsを設立。これまで体操教室や味噌づくりのワークショップなど、楽しみながら食事や運動、健康について学び、地域住民が集う場づくりに力を入れてきた。

カイケツに参加したのは、メンバーそれぞれが本業を持つなかで、業務を標準化し、それぞれの思いを実現できる組織体制にしたいという思いからだ。

カイケツ1回目の講座終了後、改めてメンバーにヒアリングを行ったところ、「療法士の可能性を広げたい」「身体に目を向ける人を増やしたい」「地域の健康の窓口になりたい」――といった意見が出てきた。「自分が自分らしくいられる社会を創りたい」という団体のミッションも再確認できたという。

担当の鈴木直人講師(日野自動車TQM推進室主査)は、「問題解決にはチームの協力が必須。良い議論をされているのではないか。『業務の標準化』とすると漠然としてしまうので、どの業務を標準化させるのか、さらなるしぼりこみが必要」とアドバイスした。

子どもの足の大切さを知ってもらうきっかけになった「足形アートワークショップ」

新型コロナウイルスの影響で、presensでもリアルな場づくりが難しくなっている。

そうしたなか、佐々木さんは「生まれた環境に関係なく、子どもたちが自分の可能性を信じられる社会を創造したい。『経済格差』は『教育格差』につながり、『教育格差』は『健康格差』でもある。どんな人でも気軽に立ち寄れる『暮らしの保健室』になれるような『駄菓子屋』さんをいつか実現したい」と展望を語った。

■だれでも自分らしくいられる場所を

ビーンズふくしまが運営する子ども食堂

フリースクールをはじめ、福島市で若者の居場所づくりに取り組むのが、特定非営利活動法人ビーンズふくしま(福島市)だ。

若者支援事業事業長の小林直輝さんは、「事業が拡大していくなかで、それぞれの事業が団体のミッションに貢献しているのか分からなくなってきた。改めてミッションを達成するための組織体制を整えたい」という思いで、カイケツに参加した。

各事業長にヒアリングをするなかで、「事業間の会議やコミュニケーションが機能していない」「業務量が多い」「事業の全体像が見えない」といった課題が見えてきたという。

古谷講師は「問題解決の基本は『見える化』。事業の計画と実績、推移を明確にし、どういう不具合が起きているのか把握することが必要だ。うまくいっているところとそうでないところがあるはずなので、冷静に事実を明らかにしていくことが大切」と話す。

小林さんは「これまでほかの事業を知る機会があまりなかったが、みんなビジョンを持って仕事をしていることが分かった。『見える化』を進め組織体制を整えていきたい」と話し、「引きこもりや困窮した家庭事情など、立場や背景にかかわらず、自分らしく生きていく権利はだれにでもある。地域の方々をエンパワメントし、孤立せずに力を発揮できるような居場所をつくってきたい」と意気込んだ。

■人とお金があれば解決するのか

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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