「草食」どころではない。「野性」を失った日本―― 野村総合研究所シンポ

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日本の現状を見据え、直面する困難を乗り越えて希望ある未来を切り拓こうと、野村総合研究所(NRI)は24日、「未来創発フォーラム2011」を東京国際フォーラム(東京・千代田)で開催した。東日本大震災を受け、9年目を迎える今年のテーマは「つなぐ想い、つくる未来」。

パネルディスカッションでは、ジャーナリスト・池上彰氏をモデレーターに、建築家・伊東豊雄氏、東京大学社会科学研究所教授・玄田有史氏、JT生命誌研究館館長・中村桂子氏、NRI公共経営戦略コンサルティング部・斉藤義明氏が参加した。

■ カネと権力は50歳以上の手に

「日本人には、問題を先送りにしない『覚悟』が必要」と話すNRI・谷川史郎取締役

「金融資産の約6割は60歳以上が保有」
「投票者の約6割は50歳以上」

NRI・谷川史郎取締役は、冒頭の講演で「金融資産や選挙投票を指標にすると、日本の重心は明らかに高齢に偏っている」と指摘し、こう続けた。「震災を機に構造改革が期待されたが、すでにトーンダウンした。多くの変化は当事者が気付かない程、(1%以下の割合で)ゆっくりと進行している」。

日本を活性化するためには、次世代が誇りを持って働ける「質の良い仕事の創造」が不可欠だという。例えば、食料自給率を40%から50%に高めるだけで、20万人の雇用が生まれる。輸入するより1.5兆円負担が増えるが、家計支出へのインパクトはわずか1%だ。団塊世代がすべて後期高齢者になるのが2025年。今は小さな積み上げでも、10年経てば大きな変化を起こせる。

オルタナSの取材に対して池上氏は、「政治家は、票を得るための政策を作る。選挙に行かない若者が増えれば、政策制度が若者にとって不公平になるのは当然のこと。世の中の仕組みを知り、自発的に動き出してほしい。世代間の『対話』というより、むしろ『対決』する熱気が必要ではないか」と語る。

■ 挫折の先に「希望」がある

左からモデレーターの池上氏、伊東氏、玄田氏、中村氏、斉藤氏

「日本の若者は草食化している」とよく言われるが、斉藤氏は、「国そのものが野性を失っている」と分析。パネルディスカッションでは、日本の「低野性」現象について議論された。

このフォーラムでは、野性とは、「自然のまま」「本能的」「創造的」であることなどを指し、低野性は「人工的」「飼いならされた状態」という意味で使われた。斉藤氏によると、野性を育む条件の一つに「逆境」があるという。

震災以前から岩手県釜石市で「希望学」を研究している玄田教授も、「人は挫折を乗り越えて希望を持つ。二度の津波に耐えた釜石の人たちには野性を感じる」という。さらに、「ではどうやって逆境を乗り越えているかというと『3人わかってくれれば大丈夫』と語った人がいた。今の若者が自発的になれない一因として、周りが『大丈夫だ』と声をかけてあげないこともあるのでは」と問題提起した。

■   10代に教わる「生きる力」

だが、若者には本当に「自発性」や「創造性」がないのだろうか。

中村館長は、「10代から教わることも多い」と話す。熊本県鹿本農業高校食品工業科では、04年度から米粉を使ったパンの開発に取り組み、地元の素材を生かしたカレーパンやメロンパンなどを商品化している。固くならないパンを作るために試行錯誤を繰り返してきた。「わからないから問い続ける。そこに『生きる力』を感じる」(中村館長)。

日本が野性を取り戻すために、自然調和も一つのカギになりそうだ。建築家の伊東氏は、「現代建築は、自然環境と人間生活を隔ててしまった。これからは、自然と共存できる空間を提案したい」と語る。伊東氏は仙台市で、皆が集い、コミュニケーションできる木造の「みんなの家」の建設を進めている。当事者意識を持つには、「まず人と話すことが大切だ」とする。

今回のフォーラムでは、NRIのフェイスブックページ上に多くの質問が寄せられ、会場で質疑応答が行われた。ソーシャルメディアの可能性について、池上氏は、「自分の意見を発信できる場。共感が集まれば、アラブの春のように社会を動かすきっかけになる」という。

近年、若者の間で、環境問題や社会貢献に対する意識が高まっている。社会課題をビジネスの力で解決する社会起業家の存在も目立つ。雇用問題や経済危機といった逆境のなかで、社会をより良い方向に変えようと動き出した小さな力が10年後、どんな未来を創り出すのか期待したい。(オルタナ編集部=吉田広子)

当日の模様は、野村総合研究所(NRI)のフェイスブックページ

 

2011年10月28日(金)13:01

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