崩壊するエネルギー基盤、世界はその先に何を見るのか--NPO法人「もったいない学会」会長 石井吉徳 1/2

3.太陽、風力など、自然エネルギーは石油代替となり得るか
太陽光発電のEPRはかなり良いケースでも5ぐらい。そして夜、曇りは発電しませんから、今の文明を支えられません。簡単に自然エネルギーで100%とはならないのです。エネルギーミックスがこれからの大きな課題です。

濃縮が資源の必要条件、それが「自然の恵み」ということ
太陽エネルギーは、人間が1年間に使う量の1万倍と専門家も繰り返しますが、いくら量があっても希薄で拡散しているものを濃縮するのにエネルギーが必要です、資源とは自然が濃縮してくれた恵みなのです。

先日NHKで、産油国のアブダビが太陽エネルギーを使って10万人都市を造ると放映していました。しかし夜は太陽は照りません。そして砂漠は年中風が吹いており、砂嵐がきたらフロントガラスが磨りガラスになるような所です。砂漠で太陽発電都市といっても簡単ではないのです。

また水素エネルギーというのも問題です。まず水素は何かの一次エネルギー資源から作れなければならない二次エネルギーです。自然界に水素資源などないのです。メタンを原料として水素は作れますが、メタンそのものが有限資源です。原発で水を電気分解するにしてももロスはあります、そのEPRも気になります。

海水ウランも量は大きいでしょうが、濃縮されていません、集めるのにまたエネルギーが要りますが、原子力関係者に今も海水ウランをと言う人が後を絶ちません。繰り返しますが、メタンハイドレートは日本の未来の天然ガス資源として喧伝されます。日本近海でボーリング調査などに毎年かなりの税が投入されますが、ガスが自噴するわけでない投入エネルギーがもったいないです。

瓦解した原発安全神話、原子力をどう見る
私は原発絶対反対論者ではありません。原子力関係者は、原子力発電は絶対に安全だと言い続けてきました。その神話に皆、洗脳されてしまった。聖書の言葉に「耳ある者は聞くべし」。人には耳がない。人は聞きたいことしか聞かないということです。

「学者らに心せよ」とも言っています。学者はわかったつもり、本当は知らない。だから学者に注意しなさいと。原子力発電、温暖化防止、それを推進する専門家、自分で自分を刷り込んでいく。だから福島のようなことが起こる。

そこで、私が言いたいのは、正論は繰り返し言い続ける必要があるということです。繰り返し、繰り返し、耳なき人に語り続けねばなりません。日本では電力の30%を原子力発電が占めますが、トータルの一次エネルギーでは10%くらい。

つまり原子力発電で全エネルギーを賄うには今の10倍が必要です。それにウラン鉱山の採掘、発電所の建設、輸送、廃棄物処理など全てに石油のインフラが必要です。この点では太陽電池などと同じです。クリーンといわれる燃料電池のリチウムも有限、リチウム産地のチリでは、採掘によって激甚の環境破壊が起こっています。

こうしたマイナス面が日本では全く報道されません。また石炭も当然有限資源ですから、いずれピークを迎えます。結論を言えば、石油に替わる優れた資源はもうないのです。そして3・11です。

日本の原子力神話が瓦解、原発災害は直接、間接に日本中を揺るがしています。その放射能被害は時空間的に計り知れないレベル、何十年と続くのです。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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