浪江町民に「被曝していただいた」?――細野原発相、TVで発言

18日夜に放映されたNHK「クローズアップ現代」で、生出演した細野豪志原発事故担当大臣が「浪江町の方々が(中略)たくさん被曝していただいた状況ではない」と語ったことが、ネット上で話題となっている。

■「『被曝していただいた』とは何事だ」

細野豪志原発事故担当相(環境省サイトから引用)

「原発運転再開“政治決断”を問う」と題して放映された同番組で、「(東電原発事故時に)福島の人々が誤った方向に逃げたことは、絶対に繰り返されてはならない。安全を最優先する姿勢が示されているのか」との質問に、細野大臣は「(福島県)浪江町の人々のことが頭から離れない。きちっと方角を示すべきだったのが示されなかった」として「そこでたくさん被曝をしていただいた状況ではないことは、後ほど確認できたが、それを経験した人々の思いは忘れてはならない」と述べた。

ツイッター上では細野大臣の発言直後に「『被曝していただいた』とは何事だ」と書き込まれ、「とりあえず、心はなくとも丁寧語を使っておけ、という姿勢がこの発言につながったと思う」などの意見が相次いだ。一方、NHKや環境省には19日現在、細野大臣の発言への抗議などは寄せられていないという。

■大飯拡散予測図は「黒塗り」

「していただく」は「してもらう」の敬語表現だが、安全神話の末に引き起こされた住民の被曝に用いるには明らかに不適切だ。とはいえ好意的に解釈すれば、国論を二分する関西電力大飯原発の再稼働問題に生番組で言及する緊張のあまり、思わず言い間違えてしまったと見れなくもない。

福井県がNGOグリーンピース・ジャパンに示した大飯原発の放射性物質拡散予測図

ところで、細野大臣が「浪江町の思いを忘れてはならない」と語ったのが本当ならば、大飯原発についても事故時には周辺住民が確実に避難できる態勢が取られているはずだ。

しかし実際には、3月初めに滋賀県がSPEEDIによる放射性物質の拡散予測の情報提供を求めても、国は「準備中」「原子力規制庁が発足していない」などの理由で未だに応じていない。また福井県は5月、NGOグリーンピース・ジャパンが行った放射性物質の拡散予測図の情報開示請求に、滋賀県以外は黒塗りの予測図を開示して応えた。避難のための情報公開は明らかに不十分で、事故時には住民に「被曝していただく」状況のまま進んでいるのが、大飯原発の再稼働だ。(オルタナ編集委員=斉藤円華)2012年6月19日

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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