JICA、「民間連携ボランティア制度」で企業のグローバル化を推進――中小企業向けに人件費8割補てんも

日本の協力で建設された井戸で水をくむ人々。ガーナ・ンサワンで(写真提供:今村健志朗/JICA)

国際協力機構(JICA)は、社員育成の場として青年海外協力隊を活用してもらおうと「民間連携ボランティア制度」を創設した。途上国でのボランティア活動を通じて、語学だけでなく異文化適応能力などを身に付け、企業のグローバル化を推進するのが狙いだ。中小企業には、協力隊員の人件費8割のほか、一般管理費の補てんを行う。

新興国での事業展開やBOPビジネスへの関心が高まるなか、企業にとってグローバルな視野や素養を備えた人材の確保は喫緊の課題だ。今回創設されたJICAの民間連携ボランティア制度では、従来の青年海外協力隊とは異なり、民間企業の要望に応じて、派遣国、職種、派遣期間などを相談しながら決定できる。

同制度のもとで派遣される協力隊員は、公的機関に配属され、所属機関の一員として活動する。現地でボランティア活動を行うことで、途上国の課題の解決に貢献するとともに、語学だけでなく、ビジネスに不可欠な高度なコミュニケーション能力、異文化適応能力、グローバルな視野、問題解決力などが身に付き、帰国後に企業活動に還元させることができる。

中小企業には、協力隊に参加する社員の給与・賞与の8割を補てんするほか、社会保険料などの事業主負担相当額をJICAが負担する。協力隊員には、現地生活費、住居費、往復渡航費がJICAから支給される。滞在期間は1年から2年で、応募は随時受け付けている。

11日に開催された企業向け説明会には、昭和機械商事(大阪市)の岡崎啓司社長がビデオメッセージを寄せた。同社では現在、7人の協力隊経験者が働いている。

岡崎社長は「ASEAN(東南アジア諸国連合)でナンバー1のコンベアメーカーになることが目標。そのため、海外要員として、『やる気』と『負けん気』にあふれ、企画力と実行力に長けている協力隊経験者を積極的に採用していきたい」と語った。

JICA地球ひろばNGO連携課の内藤徹課長は、企業向け制度を創設した背景について、「協力隊の派遣を通じて企業のグローバル化に貢献したいと考えている。さらに、協力隊員には企業で得た専門技術や知識を途上国で発揮し貢献してほしい」と話した。

2012年度は派遣者数を50人程度と見込んでいる。(オルタナ編集部=吉田広子)

 

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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