日本の自然エネルギー推進グループの活動をまとめたのが本書『自然エネルギー革命をはじめよう』(大月書店)だ。ソーラーエネルギーでの被災地支援、ゼロエミッションホテル、市民による発電など先進事例が満載。東日本大震災の後、自然エネルギー推進に向けて各地でどのような活動が展開されたのかがよくわかる。
2004年に長野県の飯田市で始まった「おひさま進歩エネルギー」は、市民発電の先駆けである。2010年からは「おひさま0円システム」で初期投資の負担なしでソーラーパネル設置を実現した。市民出資の際、お金の流れを透明化させることが重要だ。今では全国で市民発電をしたい人たちの見本となっており、原亮弘代表は「地元の人たちで、市民発電を進めてほしい」と積極的に支援している。
自然エネルギーにかかわる団体や企業が始めた「つながり・ぬくもりプロジェクト」では、被災地に電気や暖房、お湯を届けている。例えば、太陽熱温水器を贈り、それにより2カ月ぶりにシャワーを浴びることができたと喜ぶ人がいた。送電線がなくてもソーラーパネルを設置することで、電力が自給できる。地元の木材やペレットなど自然素材を利用したエネルギーは、地域にお金を循環させることができる。
究極のエコハウスともいえる「雨デモ風デモハウス」も興味深い。東京都小金井市にあるこのモデルハウスは、各分野の専門家や市民参加により2011年秋に完成。雨水や太陽光、太陽熱など自然のエネルギーを最大限に活用している。
このような各地の試みが、現在の電力独占体制を変える力となるのではないか。ドイツでは1986年のチェルノブイリ原発事故から大きな反対運動が生まれ、2000年に連邦政府は脱原発を初めて決めた。日本でも政府が方向転換するまで25年かかるだろうと、いう人もいる。将来の世代のことを考え、地域ごとに持続可能なエネルギーの自給体制を整えていくこと。市民の知恵と行動がなくして、エネルギーシフトはあえりえないだろう。(オルタナ編集部=田口理穂)