世界の自然保護、日本の技術で ――トヨタが守る生物多様性

IUCN日本プロジェクトオフィス・シニア・プロジェクト・オフィサーの古田尚也氏

■ 生物多様性の取り組みが進化

――COP10が日本で開催されましたが、企業の生物多様性保全への姿勢は変化しましたか。

IUCN日本プロジェクトオフィスは、生物多様性条約COP10を支援するため、経団連自然保護協議会内に2009年5月に設置されました。IUCNが持つグローバルなネットワークを生かし、日本国内の活動を世界各国に発信すること、またグローバルな動向を日本の関係者に知らせることが目的です。現在は、COP10で生まれた、生物多様性の損失を食い止めるために各国に求められる行動がまとめられた「愛知目標」を達成するために活動しています。

こうした活動を通して、COP10を契機に、企業の生物多様性への関心が高まったことを感じます。経営方針や環境方針の中に、「生物多様性の保全」という言葉を入れる企業が増えました。

トヨタも、COP10に先んじて2008年に「生物多様性ガイドライン」を策定し、①技術による貢献②社会との連携・協力③情報開示の三本柱で取り組んでいるそうです。

これからは、いかに現場で実践できるかが重要なのではないでしょうか。

――現場の取り組みは変わってきていますか。

現場も変わってきていると思います。COP10のときに、各社の生物多様性への取り組みを推進するため、経団連自然保護協議会が中心となって「生物多様性民間参画パートナーシップ」をつくりました。民間企業約450社のほか、経済団体やNGO、研究機関などが加盟しています。

加盟企業にアンケート調査を行ったところ、生物多様性に関する180以上の取り組み事例が寄せられました。2008年に実施した類似の調査では、植林活動が多かったのですが、今回の調査では、植林だけでなく、森林管理や海岸での活動、希少生物を守る取り組みなど、バラエティに富んでいます。COP10を機に、生物多様性の問題に対する理解が深まり、さまざまな取り組みが進んだのではないでしょうか。

――企業の生物多様性への取り組みは、正しい方向に進んでいるのですね。

正しい方向に進んでいることは間違いありません。これだけ多くの企業が、経営方針の中に生物多様性という概念を入れているのは、日本以外ではみられません。これはぜひ誇りにしてほしいと思います。

■ 車と自然保護がつながる

editor

オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

執筆記事一覧
キーワード:

お気に入り登録するにはログインが必要です

ログインすると「マイページ」機能がご利用できます。気になった記事を「お気に入り」登録できます。
Loading..