発送電の法的分離「18年以降では遅すぎる」

政府は2日、電力小売りの全面自由化、広域系統(電力融通)運用機関の設置、「法的分離」による発送電分離の3つのステップからなる電力改革の基本方針を閣議決定した。60年以上続いてきた大手電力会社による地域独占体制が撤廃されることになるが、改革の「本丸」である発送電分離の実現は早くても5年後。しかもそのために必要な法案の提出時期は、自民党の抵抗により政府原案の「2015年」から「2015年を目指す」に後退している。

■当初から「改革が遅すぎる」の指摘が

(C) Satoshi KAYA.

今回の方針で示された電力改革の行程表では、15年に広域系統運用機関を設立し、翌16年に電力小売りを全面自由化。そして法的分離による発送電分離を18~20年に実施する、としている。

この閣議決定の元となっているのは、経済産業省の「電力システム改革専門委員会」が2月に示した報告書だ。従来維持されてきた大手電力による地域独占体制は、東日本大震災と東電原発事故を通じてその信頼性が大きく揺らいだ。

同報告書ではこの点を踏まえ、電力安定供給と電気料金抑制、電力消費者の選択肢や新電力会社の参入機会を増やすことなどを目的に、段階を経て電力改革を実現するための行程表を示した。

これに関して、自然エネルギー財団やWWFジャパンは報告書の公表時に「高く評価する」と表明。しかしその一方で、法的分離の実施を18~20年とする点については「全ての改革が終わるのが7年後ということではあまりにも遅すぎる」(自然エネルギー財団)、「03年の第2次欧州電力指令を受け、ドイツでは(大手電力の)RWEらが約1年で法的分離を達成している。日本などの後発組は欧州の事例を参考できる立場にあることを考えると、もっと早期に期限を切ることができるのでは」(WWFジャパン)と注文を付けた。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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