ソフトローへの移行進む

─ルールには、法律を厳格に守る「ハードロー」という考え方と、社会の価値観を踏まえた対応を前提とする「ソフトロー」の考え方があります。後者は、市民の価値観や地域社会、消費者の反応も含む規範です。もともと、日本人にはソフトローという概念は馴染みが薄いですね。

企業不祥事が相次ぎ、この20年間、日本の経済社会はハードローが中心となってきました。しかし、2004年の「消費者基本法」の制定を契機に、法制度自体がソフトローとどう向き合っていくのかが問われ始めた。その流れを決定付けたのがISO26000です。

ISO26000が企業経営に具体的に与えた最大のインパクトは、法律のとらえ方が、ハードローからソフトローに変化したことです。

それを象徴しているのは、ISO26000を決めていくプロセスの中で、米国が反対したことです。社会的責任のように曖昧かつ明確なルールになっていないものが規格として採用されたことは、世界全体がソフトロー中心に転換したことを意味しているのではないでしょうか。

各国の法律に基づかない、社会的なコンセンサスである国際行動規範を「尊重」しなければなりません。企業は、単純に決められたルールさえ守れば良いという考えから、社会の価値観をとらえた行動が求められるようになりました。

そのために、企業は、政府当局のみならず、NGOをはじめとした様々なステークホルダーとの対話の中で、自らの
規範をつくりあげ、それをマネジメントしていかなければならなくなったのです。

そういったことから、コンプライアンスも単に「法令を順守する」のではなく、社会との対話の中で落とし所を模索する、すなわちルールを創造していかなければならないのです。

─そうなると、企業のCSRや法務担当者がコンプライアンスを単なる「法令順守」と思い込むこと自体がリスクといえますね。

そのことは経営にも現れます。法律自体が経済社会における文化や慣習を背景に運用されます。正しい運用をしていくためには、表面的な文言だけでは読み取れません。

だからこそ、グローバル企業の多くが、コアバリューは徹底するけれども、実際の運営は各国の現場に任せているのです。コアバリューと自主性のバランスを取りながら、地域社会に調和してこそ経営の目的を達成するのです。法の運用にあたっては、それぞれの国々の文化・慣習を踏まえることが不可欠です。

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