人口増加に対し企業も果たせる役割が【アジアCSR最前線】

国連の推定によれば、2050 年までの間では実質上すべての人口増加はLDCsで起こることになる。世界の人々の年齢の平均は28.9歳だが、2050年には38.4歳となる。世界全体が高齢化に向かっているものの、LDGsの15歳から24歳までの若年層の比率が高いということは、開発医療や教育、過疎地の農業開発、起業、職業訓練への適切な投資があれば、若年人口が多いことは経済成長のチャンスになりうる。しかし、教育の機会や健全な労働市場などの基本的な経済の土台がなければ、若年層の膨張は問題になりかねない。

多くの開発途上国では若者に雇用の機会がないことから欲求不満が高まっている。この点において民間セクターに果たせる役割が大いにある。

人口問題もCSRイニシアティブに

人口増加は世界の温暖化ガス排出量の増加の原因のひとつだ。しかし、排出量の増減に人口がどう影響するかという複雑なメカニズムについては、各国政府による気候変動分析ですら考慮されていない。

しかし、気候変動に関する国際パネルの報告書では、人口の一人ひとりが同等に排出に影響しているという仮定に基づく将来の予測もあり、人口増加が温暖化排出に影響することは良く知られている。

温室効果ガス排出量は消費と生産のパターンにより異なり、そのパターンは人口の多寡によって影響を受けることもわかっている。

したがって、人口構成がどう変化していくかを知ることで、温室効果ガス排出の削減のための作戦を立てることができるだろう。人口と気候変動に関する調査によれば、世界の温室効果ガス排出量に影響する人口トレンドは、都市化、核家族化や単身世帯の増加、人口の高齢化の3点である。

人口増加問題が持続可能な開発に関する議論の重要な一部であり、気候変動といった現在の課題にも影響することは明らかなのだ。人口増加と、それが持続可能な未来を構築する上で与える影響について、いまこそ議論すべき時だ。

アジアのような人口急増を伴う地域での経済の急成長は、持続可能性の成長と両立できるとは言いがたい。

人口問題をこれまで以上にCSR のイニシアティブに盛り込んでいくことが重要だ。

高橋佳子(CSR Asia シニア・プロジェクトマネージャー) 監訳

【リチャード・ウェルフォード】CSR Asia 創設者で経済学博士。20 年にわたりCSR や環境管理を研究。香港大学教授を定年退職後、2010 年にアジア工科大学(AIT)と共同事業であるアジア初のCSR 修士課程を創設。国際ビジネス、環境管理、労働人権、企業の社会責任についての著書多数。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第1号(2012年10月5日発行)」から転載しました)

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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