[CSR] 「ストーリーテリング」から「ストーリードゥーイング」へ――米サステナブル・ブランズ会議最新レポート

■クラウド、ビッグデータを活用し、より大きな関係性へ

サステナビリティ強化の流れの中で企業や組織が学んだことの一つが、サステナビリティとは地球との関係性、資源との関係性、サプライヤーとの関係性、消費者や顧客、現地コミュニティや各種ステークホルダーとの関係性など、あらゆる関係性の問い直しである、ということであろう。

SBはこの関係性の追及にも力を入れており、社内に、社外に、バーチャル・ネットワーク上にと、従来のCSRの文脈では語られない、ドラスティックな効率化を期待させるような、新しい関係性が議論された。

例えば、社内の関係性というトピックでは、人事部の存在が何度も話題に上った。企業内で人事ほど社員間のコミュニケーションに影響を与えうる部署はない。サステナビリティが人と人とのコミュニケーションに大きく依存する以上、そこをもっとうまく活用すべきである、というのである。

例えば日産は、グーグルなどサステナビリティに力を入れる企業の人事部を通し、社員の福利厚生の一貫としてリーフを提供するプログラムを発表した。

クラウド・カンパニー創立者のジェレミー・オーヤング氏による、共同経済のバリューチェーン。製品、サービス、マーケットの関係性を変革することで、「サービスとしてのブランド」を提供する。
クラウド・カンパニー創立者のジェレミー・オーヤング氏による、共同経済のバリューチェーン。製品、サービス、マーケットの関係性を変革することで、「サービスとしてのブランド」を提供する。

また、ソーシャルメディアやクラウド型のソリューションの発達で、従来障壁と考えられていた問題が低コストで解決できるようになった時代の新しい関係性を探る動きも活発だ。

シェアド・エコノミー、コラボラティブ・エコノミーなど呼ばれる「共同経済」も存在感を増してきている。

クラウド・カンパニーというベンチャー企業は、消費者を従来の「モノ・サービスを買って受け取るだけの存在」ではなく、モノ・サービス・情報を提供することもできる、企業の「パートナー」ととらえる。彼らは大企業に積極的に働きかけ、彼らをパートナーと直結させて新しいしくみをつくりだすことで、「共同経済」の浸透を目指しており、大きな注目を集めた。

さらに、関係性をバーチャル・ネットワークに広げたときに避けて通れないのが、ビッグデータとのかかわりである。

クイッドというベンチャーは、ビッグデータを解析し、ネットの世界にあふれかえる膨大なストーリー(キーワードではない)を関連づけ、企業が興味を持っている話題が世界でどういうふうに展開し、どんな新たな動きを呼び込んでいるか、という流れを追跡できるソフトウェアを紹介。有効に使えれば、これまで関係がないとされていた製品とソリューションを統合させたり、プロセスを劇的に簡素化させたり、いろいろな可能性が考えられる。

サステナビリティがこういった新しい動きをどう有効に活用していくのか、という問いを投げかけるセッションでもあった。

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オルタナ編集部

サステナブル・ビジネス・マガジン「オルタナ」は2007年創刊。重点取材分野は、環境/CSR/サステナビリティ自然エネルギー/第一次産業/ソーシャルイノベーション/エシカル消費などです。サステナ経営検定やサステナビリティ部員塾も主宰しています。

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