社会問題と解決策を結びつける取り組みは、エーザイの事例が参考になります。同社は企業理念で、「使命は、患者様満足の増大であり、その結果として売上、利益がもたらされ、この使命と結果の順序が重要と考える」とうたっています。

そして、患者というステークホルダーを最重視する考え方を実践するものとして、「業務時間の1% を患者様とともに過ごす」ヒューマン・ヘルスケア(hhc)活動を推進。そこで得られた問題に関する知識から、新しい価値を生み出すための取り組みを組織的に展開しています。

現場に赴いた社員は、患者やご家族と過ごすことを通じて問題を感じ取ります。それを持ち帰り、社内での議論を通じて問題を普遍化します。そうすることで、ほかの部署も巻き込みながら問題に対する対応策を磨き上げるのです。そうして得られた解決策を一人ひとりが現場で実践するというプロセスを確立しています。

また、こうしたプロセスを効果的に機能させるため、hhc活動を推進する専門組織の設置や、同活動成果の人事評価への反映、現在の活動および過去の優れた事例などのイントラネットでの共有など、いろいろな工夫をしています。

IBMやエーザイのような取り組みは、すぐに出来るものではないかもしれません。しかし、例えば、東日本大震災の復興支援で把握した社会問題に対する解決策を社内で議論する。そして、可能なものは、まず社会貢献活動として展開するといったことは、比較的取り組みやすいのではないでしょうか。

こうした活動を進めていくことにより、社内での意識も醸成され、社会問題を解決するイノベーションが生まれやすくなると思います。社会問題解決の取り組みは、NGO/NPO と連携しやすいため、そうした組織とのネットワークを通じて社会問題に対する理解を深められます。

また、社会問題を解決するサービスは、収益モデルが描けていない段階では、社会貢献活動として展開することも可能です。そうした特性も活用しながら、より多くの企業が、社会問題解決イノベーションの創出に向けた取り組みを進めることを期待します。

【みずかみ・たけひこ】東京工業大学・大学院、ハーバード大学ケネディースクール卒業。旧運輸省航空局で、日米航空交渉、航空規制緩和などを担当した後、アーサー・D・リトルを経てクレアンに参画。CSR/サステナビリティのコンサルティングを主業務とする。

(この記事は株式会社オルタナが発行する「CSRmonthly」第3号(2012年12月5日発行)から転載しました)

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