水上 武彦(株式会社クレアン)
アダム・スミスによるレッセフェールの体系化、英国で始まった産業革命以降、人類の経済活動は飛躍的に発展しました。最近200年で人口は6倍、経済活動は50倍になりました。この結果、人類の活動は地球環境に大きく影響を及ぼすようになりました。
さらに、最近の経済のグローバル化、IT 技術の進化、金融革命などにより、経済は新しい段階に入りました。例えば、米国の株価は、1987年に2000ドルだったものが、2007年には1万4000ドルとなっています。
これらの経済の拡大をもたらしたものは、企業を中心とする成長至上主義とも言うべきものです。一方で、環境面や社会面の問題も顕在化してきており、「人類は持続可能な活動をしているのか」「今の経済システムは、本当に人々を幸せにしているのか」といった懸念が生じています。
この懸念に対する一つの答えがCSRです。CSRは企業活動が社会に及ぼす悪影響を抑制するのと同時に、良い影響を創り出すように求めています。
NGOの監視の強化や、内部通報などが一般化したことで、企業活動の悪影響に関しては、ガバナンスが効くようになっています。一方、良い影響を創り出すという面については、企業の対応は、寄付などの社会貢献活動が中心で、その影響力は限定的です。事業活動を軸に考える
そこで登場してきたのが、CSV(Creating Shared Value =共通価値の創造)という考え方です。CSVは、事業活動を通じて現在の社会経済システムが抱える問題を解決するという考え方と具体的アプローチからなる経営フレームワークです。
従来、「戦略的CSR」「本業のCSR」「攻めのCSR」などと言われてきたものを具体的に体系化したものとも言えます。CSVの基本アプローチは、次の3つです。
1 製品・サービスのCSV
2 バリューチェーンのCSV
3 クラスターのCSV